研究課題/領域番号 |
25707036
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中村 知裕 北海道大学, 低温科学研究所, 講師 (60400008)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 海洋物理 / 乱流 / サブメソスケール / 内部波 / 微細流動構造 |
研究実績の概要 |
海洋中の熱や溶存物質はすべて、海水混合から海洋循環を介して海全体に輸送される。この海洋学における最も基本となる混合を引き起こす、海洋内部の3次元微細構造(水平スケール<O (1km) )は、これまで観測方法がなく実態が不明であった。本研究は、その解決に向けた世界初のチャレンジである。そのための手段として、昨年度に研究代表者の考案した「3次元微細流動構造 観測システム」を構築した。 本年度は、6月から7月にかけて実施されたロシア研究船マルタノフスキーを用いた日露協同観測に参加し、千島列島北東部のスレドネワ海峡(摺手海峡または摺手岩海峡)において、上記システムを用いて潮汐により生成された大振幅内部波とそれによる微細流動構造の観測を行った。千島列島域は潮流とそれによる鉛直混合が強く、周辺海域のみならずオホーツク海から北太平洋全域に影響を与えている。スレドネワ海峡でも、衛星観測から判断すると、非常に激しい鉛直混合が生じている。また、この観測の準備として3次元微細流動構造観測システムを船から吊り下げて海底付近まで降ろすための治具の設計および作成も行った。 加えて、観測データから流速場の3次元構造の解析を行うためのデータ解析プログラムの開発も引き続き行うとともに、内部波や渦から乱流に至る過程の力学や混合(特に千島列島域の潮汐混合)がオホーツク海や北太平洋の海洋循環や海洋中の物質循環に与える影響についての研究も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主要目的である「3次元微細流動構造観測システム」の構築を終えた。構築した新システムを使ったテスト観測も2回実施し良好な結果を得た。また、本研究期間中に計画されていたロシア海域における観測航海に参加し、通常は実施困難な千島海峡域の内部波砕波の観測という貴重な機会を活かすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
計画に大きな変更はない。構築した観測システムを用いてサブメソスケール渦ならびに巨大内部波の砕波の観測を行うとともに、観測で得られたデータの解析とその手法の開発および結果の取り纏めと成果発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
助成金制度の利点を活用し、消耗品購入予算の一部を次年度の観測航海用に回したため次年度使用額が生じた。そのうち一部を、データ解析等のための研究補助員雇用に充てたため、最終的には直接経費次年度使用額が17,833円となった。
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次年度使用額の使用計画 |
直接経費次年度使用額(17,833円)は次年度航海の消耗品購入に用いる計画である。
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