研究課題
20億年前以前、太陽輝度は現在の約80%以下であり、地球大気組成が現在と同じだと仮定すると地球表層は凍り付くほど寒冷であったと予想されている。しかし、地質記録は38億年前から液体の海洋が存在していたことを示している。この矛盾(暗い太陽のパラドックス)を解消するために、初期大気は温室効果ガスであるCO2に富んでいたとする仮説が数値計算から提唱されている。本研究ではこの仮説を検証するために海洋底玄武岩の空隙を埋める熱水性石英中の流体包有物組成(CO2濃度、Ar同位体比、炭素同位体比)に基づき定量的に『大気海洋CO2濃度変動』を解読し、この仮説を検証することを目的としている。平成26年度は、昨年度までに終了していなかった流体包有物の均質化温度、氷点温度測定を行い、熱水性石英と流体包有物の岩石学的一次記載を完了した。これにより、保有している12地域9つの年代の試料のうち7地域6つの年代の試料が本研究に比較的適していることが明らかになった。平成26年度は、これらの試料のうち特に保存状態の良い32億年前の試料(同年代2地域)と29億年前の一部の試料について分析を行った。その結果、32億年前の試料の流体包有物は2地域ともCO2濃度が高いことが明らかになった。したがって、本研究で使用している熱水性石英中の流体包有物は全球的な海水組成を保持している可能性が高まった。昨年度までの結果と合わせると、太古代前期から中期は海水中のCO2濃度が高く、太古代後期から原生代前期にかけて海水中CO2濃度が著しく減少したことが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は、海洋底玄武岩の空隙を埋める熱水性石英中の流体包有物組成(CO2濃度、Ar同位体比、炭素同位体比)から大気海洋CO2濃度変動を解読することである。平成26年度は、平成25年度に終了しなかった流体包有物の均質化温度、氷点温度測定を完了することが一つの目標であったが、これは予定通り達成された。また、平成26年度は32億年前の2地域の試料と29億年前の一部の試料の分析を行った。平成25年度に繰り上げて行った分析と合わせると、計5地域4つの年代の試料の分析がほぼ終了した。尚、平成25年度に行った分析結果について論文として1報投稿した。一方、平成26年度は真空ラインの増設を行う予定であったが、予定を変更して真空ラインの増設を必要としない試料の分析を優先したため、真空ラインの増設は次年度に繰り越した。総合的には、計画より進んでいるものと遅れているものがあり、進捗状況は「おおむね順調」とした。
平成27年度以降は残りの試料について予定通り保存状態の良いものから分析を進める。特に、平成27年度は28または27億年前の試料、さらに26億年前の試料について分析を行う。その結果から太古代後期の大気海水CO2濃度減少イベントの年代をより詳細に明らかにする。尚、流体包有物のCO2濃度が低い場合は、CO2の炭素同位体比分析のため試料の量自体を増やす必要が出てくると予想されるため、真空ラインのH2Oの定量分析を行う部分について改良、増設を行う。
平成26年度に行う予定であった真空ラインの改良、増設については、一連の分析の途中で部品の交換を行うべきではないこと、平成26年度は増設の必要性がほとんどないと予想された試料の分析を優先的に行ったことから、平成27年度に繰り越した。また、平成26年度に行った数十試料の分析では当初の予想に反して装置の故障に由来する消耗品の交換が必要なかったため、消耗品費を平成27年度に繰り越した。
平成27年度に繰り越した真空ラインの改良、増設を行う。行うことのできなかった真空ラインの改良、増設を行うために繰り越した助成基金を一部使用する。また、平成26年度に行わなかった消耗品の交換は平成27年度には必要になると予想されるため、平成27年度の早い時期に消耗品の交換を行い、新たな試料の分析を進める。
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