研究課題
20億年前以前、太陽輝度は現在の約80%以下であり、地球大気組成が現在と同じだと仮定すると地球表層は凍り付くほど寒冷であったと予想されている。しかし、地質記録は38億年前から液体の海洋が存在していたことを示している。この矛盾(暗い太陽のパラドックス)を解消するために、初期大気は温室効果ガスであるCO2に富んでいたとする仮説が数値計算から提唱されている。本研究ではこの仮説を検証するために海洋底玄武岩の空隙を埋める熱水性石英中の流体包有物組成(CO2濃度、Ar同位体比、炭素同位体比)に基づき定量的に『大気海洋CO2濃度変動』を解読し、この仮説を検証することを目的としている。平成28年度は、これまで分析した保存状態の良い試料(35、32、29、22億年前)に加え、保存状態が中程度の試料も分析を進めたものの、流体包有物の抽出量が少なく定量に至らない試料も多くあることがわかった。また、抽出できた場合も、CO2濃度、炭素同位体比、アルゴン同位体比に相関は見られず、海水CO2濃度に定量的な制約を与えることはできなかった。しかしながら、当初予定していた世界12地域9つの年代の試料について、分析可能な試料すべてからデータを得ることができた。これにより、地球史を通じた大気海洋CO2濃度変動について初めて地質試料から制約を与えることができた。また、熱水性石英を保持する変質玄武岩の熱水変質作用についても分析・解析を行い、流体包有物分析の結果と調和的であることを示した。この一連の結果から、1) 太古代前期から中期においては暗い太陽を補うことができるだけの大気CO2による温室効果があったこと、2) 太古代後期から原生代前期かけて大気海洋CO2濃度が劇的に減少したこと、が明らかになった。さらに、この太古代後期に始まった大気海洋CO2濃度の減少が地球史最初の超大陸の形成と分裂に関係している可能性を示した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Precambrian Research
巻: 286 ページ: 337-351
10.1016/j.precamres.2016.10.003