研究課題
本年度では、これまで開発を進めてきた高圧下アコースティック・エミッション(AE)測定システムを用い、稍深発地震発生場である、沈み込むスラブ内の温度圧力条件下(1-3 GPa, 600-1100℃)におけるカンラン岩の一軸圧縮変形実験を行った。無水条件下では、600-900℃の広い温度条件下にて高歪において強いAEの発生が多数確認された。一方、1000℃では高歪においても弱いAEのみが多数発生することが確認され、1100℃ではAEは殆ど確認されなかった。すなわち、カンラン岩の脆性-塑性遷移は1000-1100℃である結果が得られた。さらに、いずれの温度条件下においても、歪速度の増加とともにAEイベントの発生頻度が増加し、歪速度1E-5 s-1を閾値として、脆性-塑性遷移することも明らかとなった。以上より、稍深発地震発生のためには、900℃以下の中温かつ1E-5 s-1以上の歪速度である必要があるものと考えられる。なお、AE発生に伴い、破断面(断層)が形成される様子を放射光X線「その場」観察することに成功した。そのような断層面には、サブミクロンの破砕物からなるガウジ層が形成されていることも観察された。このことは、稍深発地震の発生においては、極細粒粒子がAE発生に伴って局所的に形成されることを示唆する。すなわち、申請書に記載した仮説③「不安定現象に伴う変形の局所化モデル」が有力な仮説であるものと考えられる。なお、仮説①「水による断層強度低下モデル」を実験的に検証するため、上記と同様の温度圧力条件下にて含水条件下におけるカンラン岩の一軸圧縮実験を行ったところ、AEの発生はせず、試料は塑性変形することが確認された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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