研究概要 |
地球・火星・金星には,水が液体,固体もしくは気体として存在している.また,コンドライト隕石母天体の未分化微惑星にも大量の水が存在することが知られている.しかし,地球型惑星と未分化微惑星の中間にあたる,原始惑星の含水量については不明である.原始惑星の水についての情報は,惑星の形成・成長過程における水の挙動や,地球型惑星の水の起源を解明する上で必要不可欠である.そこで本研究では,原始惑星の含水量とその性質(水素同位体組成)を,様々な石質・石鉄質隕石に含まれるリン酸塩カルシウム鉱物から推定する. 本研究ではこれまでに,電子線マイクロアナライザーを用いて,ユークライト隕石のCamel Donga, DAG-380, Agoult,玄武岩質隕石のIbitira,メソシデライト隕石のVaca Muerta,輝石岩隕石のNWA6704について,試料中におけるリン酸塩カルシウム鉱物の同定を行った.その結果,これらの全ての隕石中に比較的大きい(>100 micrometer)リン酸塩カルシウム鉱物が含まれていることが分かった.さらに,これらの隕石とユークライト隕石NWA049について,表面電離型質量分析計と同位体希釈法を組み合わせることにより,ウラン―鉛年代分析を行った.その結果,NWA6704は太陽系誕生から凡そ400万年後の結晶化年代を,Ibitiraは凡そ1000万年後の変成年代を示したのに対して,ユークライト隕石は太陽系誕生から凡そ1000万年後から2億年後の変成年代を示すことが分かった.
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