研究課題/領域番号 |
25707042
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飯塚 毅 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (70614569)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 原始惑星 / 水 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,原始惑星がどの程度水を保持していたのか,その水はいつどこからもたらされたのかについて理解することである。そこで本研究では,原始惑星の含水量とその性質(水素同位体組成)を,様々な石質・石鉄質隕石を用いて,特にリン酸塩カルシウム鉱物を用いて推定する. これまでに,複数の天体から飛来した隕石について,研究を実施してきた。具体的には,小惑星ベスタに起源をもつユークライト隕石,アングライト隕石,未分類隕石について研究を実施した。その中でも,Ibitira,Agoult,NWA 6704隕石については,特に詳細な研究を実施した。 Ibitira隕石は,気泡をもつ非常に稀な未分類隕石であり,その気泡の存在から親マグマは揮発性成分を含んでいたと考えらる。この隕石について年代分析を行った結果,形成年代は45.57億年前であることが明らかになった。さらに,この隕石のPbの含有量は他の中揮発性元素に比べて高いことから,親マグマから流体が離溶し,その流体に他の中揮発性元素が分配されたことを示した。この結果は,国際学術雑誌にて報告された。 Agoult隕石は,Vestaから飛来した玄武岩質隕石とされており,そのAgoult中の輝石,斜長石,ジルコンについて年代測定を行った。その結果,この隕石は45.55億年前に高温の変成作用を被ったことが明らかになった。さらに,ジルコンの微量元素組成から,この変成作用時の酸素フガシティーを推定し,この変成作用時には酸化剤となりうる水は存在しなかったであろうことを示唆した。この結果は,国際学術雑誌にて報告された。 NWA 6704隕石は,未分化な天体から飛来したと考えられるprimitive achondriteであり,この隕石は原始惑星の最初期進化についての情報を与えうる。この隕石には,流体包有物と思われる包有物が存在することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,隕石の鉱物学,年代学,微量元素及び同位体地球化学を駆使する研究である。当初の予定では,微量元素や同位体地球化学はリン酸塩鉱物の水素同位体比の後に進める予定であったが,化学実験室の立ち上げなどが予想以上に順調に進んだことを受けて,前倒しして研究を実施している。その一方で,リン酸塩鉱物の水素同位体組成の分析は当初の予定より少々遅れ気味であり,全体としては研究実施順序に前後はあるものの,概ね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,引き続き隕石の微量元素及び同位体地球化学を実施するとともに,リン酸塩鉱物の水素同位体分析をより精力的に進めていく。また,これまでに得られている年代分析の結果を引き続き論文化していく予定である。NWA 6704隕石については,流体包有物と思われる包有物が見つかっているので,この包有物についてより詳細な元素同定などを進めていく予定である。このような流体包有物の存在は当初あまり期待していなかったが,リン酸塩鉱物よりもより直接的に水についての情報を与えてくれる可能性があるので,特に詳細な研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった複数の隕石試料を,共同研究者から無償で入手することができたため.
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次年度使用額の使用計画 |
新たに有用であると明らかになった隕石試料を購入する予定である.
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