本研究の目的は,地球型惑星の材料となった原始惑星に,どの程度水が含まれていたのか,その水はいつどこからもたらされたのかについて理解することである。地球型惑星には,水が液体,固体もしくは気体として存在している.また,コンドライト隕石母天体の未分化微惑星にも大量の水が存在することが知られている.しかし,地球型惑星と未分化微惑星の中間にあたる,原始惑星の含水量については未だに良く分かっていない.原始惑星の水についての情報は,惑星の形成・成長過程における水の挙動や,地球型惑星の水の起源を解明する上で必要不可欠である.そこで本研究では,原始惑星の揮発性成分の含有量とその性質(水素同位体組成)を,様々な石質・石鉄質隕石を用いて推定してきた. 最終年度では,これまでに得られた小惑星ベスタに起源をもつユークライト隕石や未分類石質隕石の揮発性成分量に基づいて,惑星形成・成長過程における揮発性成分の振る舞い,及び地球型惑星の水の起源についての考察を進めてきた.特に,中揮発性元素であるアルカリ元素の枯渇度合いが地球と同程度かそれ以上の隕石中にも水が含まれていることを示した上で,惑星形成時に起きた高温過程の際にも水は失われていなかった可能性を示した.さらに,これまでに地球型惑星の水の起源の仮説として考えられていたレイトベニア仮説の検証を行った.レイトベニア仮説は,地球マントルの強親鉄性元素の過剰をコンドライト質隕石の遅い集積によって説明しようとする仮説であり,そのコンドライト質隕石が地球の水をもたらしたと提唱されていた.しかし,マントル中の強親鉄性元素の過剰は超巨大衝突時に飛散した地球型惑星のコア物質の破片の二次的な集積で説明できることを示し,地球は超巨大衝突時には既に水を有していた可能性を示した.これらの研究成果は,国内・国際学術雑誌にて公表された.
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