近年、緑色植物等の光化学系II反応中心における初期電荷分離はサブピコ秒で起こることが実験的に示唆されている。これは紅色細菌の反応中心に比べて約10倍も速く、また、二次元電子分光データでは色素の分子内振動が初期電荷分離を促進することが示唆されている。本研究では、量子化学計算で得たクロロフィルおよびフィオフィチンのHuang-Rhys因子を用いて初期電荷分離反応の量子動力学計算を行い、個々の分子内振動はPSII電荷分離に大きく寄与しないが、全モードの共同的な寄与によりPSII電荷分離が大きなstatic disorderに対して頑健なサブピコ秒電荷分離反応を引き起こしていることを明らかにした。
|