研究課題/領域番号 |
25708006
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中尾 佳亮 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60346088)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ベンゼン / アルキル化 / C-H官能基化 |
研究実績の概要 |
芳香族C(sp2)-H結合の官能基化は,「ポスト・クロスカップリング反応」として極めて注目されている。芳香族C(sp2)-H結合のアルキル化については,アルケンに酸触媒を作用させて生じるカルボカチオンを経由するFriedel-Crafts (FC)反応が,最も一般的な手法の一つであり,工業的にも実施されている。しかしながら,Markovnikov則に従って必ず分岐体を生じるため,直鎖型の生成物を得ることは不可能である。このような背景から,遷移金属触媒による直鎖選択的アルキル化が検討されてきたが,その成功例は,上述のようにオルト配向基を有する基質に限られている。ベンゼンの1-アルケンに対する付加では,l/b(直鎖/分岐)= 1.6:1がこれまでの最高記録である。したがって,直鎖選択的なベンゼンの逆Markovnikov型アルキル化は,極めて重要でありながら未踏の触媒反応である。 このような背景から本研究では,オルト配向基に依存することなく,ベンゼン環のC-H結合を触媒的にアルキル化する新手法の開発に取り組んでいる。平成26年度は,前年度に見出したベンゼンの直鎖選択的アルキル化反応の縮合多環芳香族化合物への展開を検討した。その結果,嵩高いN-ヘテロ環状カルベン配位子とNi(0)錯体からなる触媒に,塩基を添加する反応条件が最適であることを見出した。例えば,ナフタレンの直鎖選択的アルキル化反応が本条件下,初めて進行し,1位および2位での直鎖アルキル化体混合物が,収率約50%(生成比90:10),l/b = >95:5で得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した「縮合多環芳香族化合物の直鎖選択的アルキル化」について,標的反応を実現した。反応位置の選択性制御についても,ある程度の見通しが立った。一方,得られた生成物の物性測定については,未解決であることから,計画全体としては「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
実験と理論計算の両アプローチから反応機構解析を進め,触媒活性の向上につなげるとともに,置換ベンゼンのアルキル化に関する検討を進め,ファインケミカル合成に有用な位置選択的アルキル化反応の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた消耗品に関して,研究室で以前に購入してすでに所有していた,あるいは別の研究予算で購入して余っていた同等の物品を使用することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
薬品,ガスボンベ,ガラス器具などの物品費として使用する予定である。
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