金属触媒を用いてC-H結合を直截的に官能基化する反応の研究が,世界中で隆盛を極めている。なかでも芳香族C(sp2)-H結合の官能基化は,「ポスト・クロスカップリング反応」として極めて注目されているが,芳香族ケトンのオルト位アルキル化に代表されるように,大部分の研究が,ベンゼン環上の配向基を利用したオルト位選択的反応である。この状況は,多くの研究が古くから知られているPd触媒系や村井反応で見出されたRuおよびRh触媒系を利用した応用研究に過ぎず,本質的に新しい触媒系の開発が停滞していることに起因する。このような背景から本研究では,オルト位配向基に依存することなく,ベンゼン環のC-H結合を触媒的にアルキル化する新手法を開発する。平成29年度は,前年度に予想外に見出したベンゾフランのアルキル化反応の検討をさらに進めた。2位にアミノカルボニル基を有するベンゾフランのアルケンによるアルキル化反応が,ベンゼン環上6位で選択的に進行することを見出した。2位にアミノカルボニル基を有するインドールでも中程度の収率,選択性ながら6位アルキル化体が得られた一方,ベンゾチオフェンの反応は全く進行しなかった。
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