研究実績の概要 |
有機ピラー型かご状錯体の内部空間に、Au(I)3核錯体を1分子、2分子、3分子集積させたAuイオンクラスター(Au3, Au6, Au9)は、高い電気伝導性を示し、長距離電子輸送を可能にする。平成28年度は、Auイオンクラスター(Au6, Au9)にAg(I)イオンを挿入した際の電気伝導性を調べた。Au3-Ag-Au3, Au3-Ag-Au3-Ag-Au3ヘテロイオンクラスターの電気伝導性は、元になるAuイオンクラスターと比べて約1/10に減少した。Auクラスターの高い電気伝導性は、Au(I)3核錯体どうしに働く多点でのAu(I)-Au(I)相互作用に起因することが立証された。本成果は、Chem. Lett. (2016) vol. 45, 764-767にて論文発表した。 有機ピラー型かご状錯体内で、電子ドナー性のAu(I)3核錯体と、電子アクセプター性のM(I)3核錯体(M = Ag, Cu)をペア包接させることにより、Au3-M3ヘテロイオンクラスターの合成に取り組んだ。ドナーとアクセプターからなるヘテロ集積体はホモ集積体よりも安定である。実際、電子アクセプター性のゲストとして有機分子であるナフタレンジイミドを用いた場合には、Au(I)3核錯体とナフタレンジイミドとのペア集積体を形成した。しかし、Au3-Au3イオンクラスターに対してCu(I)3核クラスターを過剰量加えてもゲスト交換は起こらず、Au3-Cu3クラスターは得られなかった(Au3-Au3イオンクラスターの構造は維持された)。一方、Ag(I)3核クラスターを過剰量加えた場合には、Ag(I)3核クラスターが分解し、遊離したAg(I)イオンがAu3-Au3イオンクラスターに挿入され、Au3-Ag-Au3ヘテロイオンクラスターを定量的に形成した。
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