研究課題/領域番号 |
25708010
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
古川 修平 京都大学, 物質ー細胞統合システム拠点, 准教授 (90452276)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 金属錯体 / マクロ構造 / 複合体 / 金属酸化物 |
研究概要 |
金属イオンと有機配位子の錯形成反応によりナノ構造体として組み上がる配位高分子は、有機配位子の「化学的多様性」を最大限に生かすことで、構造体自体に本質的に内在する「ナノ空間」を自在に設計することのできる結晶性材料である。しかしながら、分子レベルの高度な設計性を有する一方で、溶液中における自己集合化に依存する合成法であるため結果として結晶粉末が得られ、そのマクロな形態には全く注目が置かれてこなかった。一方で、金属酸化物は導電性・触媒機能といった「物性の宝庫」であり、ゾルゲル法により「マクロ構造体」を構築が可能であり、その高次元構造に基づく「マクロ空間」を用いた高速物質輸送能により、触媒反応や物質分離を改善することが可能である。本申請課題では、配位高分子の「化学的多様性」と「ナノ空間」機能を最大限に引き出すため、高次元マクロ構造をもつ複合体の合成を目的とする。すなわち、ナノ及びマクロな「階層的空間」機能に由来する分子選択性及び高速物質輸送能を有する光・電気・触媒機能をもつ材料創製を行う。 本年度は、様々な酸化物を用いた複合材料の合成を行った。エレクトロスピニング法を用いることで、簡便に酸化アルミナナノファイバーを合成し、表面のみを部分的に「多孔性配位高分子」へと変換する手法を用いることで、酸化アルミニウム/多孔性配位高分子複合体ナノファイバーの合成に成功し、「階層的空間」を有することを吸着測定により明らかにした。さらに、酸化バナジウムの2次元ハニカムマクロ構造体を部分的に多孔性配位高分子へと変換させることで、酸化バナジウム/多孔性配位高分子複合体の合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、アルミニウム、バナジウムの酸化物を合成原料として用い、「配位レプリケーション法」を用いて部分的に多孔性配位高分子へと変換させることに成功した。現在は銅、チタンといった多様な金属酸化物へと展開している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に達成した課題(A):多様な酸化物を用いたマクロ構造を有する複合体の合成を元に以下の課題を行う。 課題(B):高次元マクロ構造複合体を用いた分子選択的な光・電気・触媒機能の評価(平成26年度) 1μm程度の「マクロ空間」をもつ高次元構造体は、触媒反応において物質(基質)輸送を大きく促すため反応効率を大幅に向上させることができる。また、配位高分子に由来する「ナノ空間」は配位子を変えることで、基質に合わせて設計することが可能であり、その特異な吸着機能により低濃度においても基質を選択的に補足することができる。本研究課題では前年度までに合成された「階層的空間」をもつ配位高分子/酸化物複合体の高次元マクロ構造(特に三次元モノリス構造)を用いて、分子変換システムの評価を行う。 酸化バナジウムはバナジウムイオンの酸化数に応じて多彩な酸化物状態(VO, V2O3, VO2, V2O5)をとりうる。特に、V2O3は導電体、V2O5は酸化触媒として知られている。これら酸化物はゾルゲル法により三次元モノリス構造を構築可能であることが知られている。そこでまず、V2O5のモノリス構造体を部分的に配位高分子[V(O)L]nに変換した複合体を用いて、一酸化炭素COの酸化反応を行う。比較対象として高次構造を持たない粉末状態の複合体と比較することで、「マクロ空間」に由来する反応特性を調べることできる。次に、V2O3を電極基板上に高次構造体として構築し、上記と同様に部分的にバナジウム配位高分子に変換することで、複合体の高次構造を作成する。ここでは、燃料電池電極触媒として重要なメタノール酸化反応を行う。上記2つの反応ともに、配位子Lを変化させ「ナノ空間」の細孔サイズ・細孔特性を調整することで、基質吸着の最適化が可能である。
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次年度の研究費の使用計画 |
代表が所属している研究機関が当初購入予定の装置を導入したため、本年度の基金助成金の使用額が当初予定していた額より大幅に減少した。 次年度へ繰り越した基金助成金は、研究をさらに発展させるため研究補助員の雇用費用として使用する予定である。
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