研究実績の概要 |
アミン有機触媒を用いたアルデヒドの電子不足アルケンへの不斉共役付加反応は炭素-炭素結合を構築する有用な反応の一つであり、様々な電子不足アルケンが求電子剤として用いられている。この際、電子不足アルケンとしては、ニトロアルケンやα,β-不飽和ケトンが汎用されているが、電子求引基のβ位に置換基がある場合は、シン体の共役付加生成物が主なジアステレオマーとして得られ、アンチ体の共役付加生成物は得られない。アミン有機触媒と求核剤となるアルデヒドから生じるエナミン中間体が電子不足アルケンと反応する際、立体反発を避けるように反応が進行するため、シン選択的な反応が有利となることが知られている。アンチ体の共役付加生成物を主生成物として得るためには、エネルギー的に不利な遷移状態を経る必要がある。そこで本研究では、アミン有機触媒に酸触媒として機能するアルコール部位を導入して、酸塩基複合型の触媒とすることで通常とは異なるジアステレオ選択性の獲得を試みた。導入したヒドロキシ基がα,β-不飽和ケトンとの水素結合を形成することで、エネルギー的に不利な通常とは異なる遷移状態が安定化された結果、目的のアンチ体の共役付加生成物が高いエナンチオ選択性で得られた。また、触媒の母骨格がビナフチル型の触媒よりもビフェニル型の触媒の方がアンチ選択性を向上させられることが分かった。一方、酸触媒として機能するアルコール部位を持たないビナフチル型のアミン有機触媒はシン体の共役付加体を高エナンチオ選択的に与え、酸触媒部位の有無でジアステレオ選択性の制御が可能となった。
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