研究課題/領域番号 |
25708017
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤原 哲晶 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30374698)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 二酸化炭素 / ニッケル / アルキン / 亜鉛 |
研究実績の概要 |
炭素‐炭素多重結合を有する化合物に対して2分子の二酸化炭素を導入するダブルカルボキシル化反応はジカルボン酸誘導体の効率的な合成法として期待がもたれる.しかし,触媒的なダブルカルボキシル化反応が進行する系は,ニッケル触媒と有機亜鉛試薬を用いたアレンの反応例に限られていた.我々は内部アルキンに対するダブルカルボキシル化反応が,ニッケル触媒,臭化マグネシウムならびに亜鉛を添加することで常温・常圧の二酸化炭素雰囲気下で良好に進行することを見出した. 5-デシンを基質として最適条件を検討したところ,触媒としてNi(acac)2(bpy),還元剤として亜鉛粉末,添加剤として臭化マグネシウムならびにモレキュラーシーブス,溶媒としてDMFを用いた場合に,常温・常圧の二酸化炭素雰囲気下でダブルカルボキシル化反応が進行することがわかった.酸処理ののちガスクロマトグラフィーで分析したところ,ダブルカルボキシル化体 が74%の収率で得られた.配位子であるbpy,臭化マグネシウムならびに亜鉛はこの反応に必須の要素であり,これらが1つでも欠けると目的反応は全く進行しないことから,これらが本反応達成のために必須の要素であることが分かる.この反応は,様々な内部アルキンを用いて効率良く反応が進行することを明らかにした,更に,この手法を用いてケトメリン酸A無水物の全合成を達成した.また,触媒反応経路を,DFT計算を用いて探索・検討した.その結果,必須の添加剤でる臭化マグネシウムがニッケル(II)錯体中間体に配位することで,ニッケルの1電子還元が効率良く進行しニッケル(I)錯体が生成することが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請課題では,炭素-炭素結合形成を伴う二酸化炭素固定化反応の開発を進めている.本年度は,実績概要に示したように,内部アルキンに対するダブルカルボキシル化反応がニッケル触媒,臭化マグネシウム,亜鉛を用いたときに効率良く進行することを見出した.このような成果が得られている現状から,概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
金属ヒドリドを活性種とする二酸化炭素の触媒的固定化反応では通常、炭素-炭素多重結合に対する反応の場合にはカルボン酸が、そうでない場合にはメタノールなど二酸化炭素が還元されたC1化合物が生成物として得られる.一方,申請者は,銅触媒によるアレンのヒドロカルボキシル化反応開発の過程で,生成物としてカルボン酸ではなくホモアリルアルコールが得られることを予備的に見出した.今後は,この反応における最適化,基質適用範囲の拡張ならびに反応機構に関する検討を進め,二酸化炭素と有機物から高級アルコールを得る反応の開発を進める. また,光エネルギーを駆動力にする新規二酸化炭素固定化反応の開発に関する研究も重点的に行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度,均一系触媒を用いる2つの新規二酸化炭素固定化反応を開発することができたことから,本申請課題の研究そのものは概ね順調に進行している.一方で,より挑戦的な反応を開発するプロジェクトの立ち上げが当初の予定よりもやや遅れた.このプロジェクトを次年度に重点的に進行させるため,これにかかる経費を基金から次年度に先送りすることした.
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次年度使用額の使用計画 |
H26年度遅れていた光エネルギーを使用する新規二酸化炭素固定化反応の開発を進める.H26年度にそのために必要な光源,反応容器,および種々の光触媒の購入経費に充てる.
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