炭化水素の最終形態である二酸化炭素を炭素源とし,再度有機資源へと再生する物質変換法の開拓は,二酸化炭素削減や隔離技術の開発とならび,今後の地球環境の保全や炭素資源循環社会の構築・発展に寄与する重要な研究課題である.本申請では,炭素-炭素結合形成を伴う触媒的な二酸化炭素固定化反応の開発を目的とし,様々な遷移金属錯体触媒を活用する反応の検討を進めてきた. 最終年度となる本年度は,我々がこれまでに開発してきたコバルト触媒による反応開発の知見を元に,アルキンを基質とするカルボキシル化反応を検討した.その結果,二酸化炭素と亜鉛粉末を用いることにより,アルキンのカルボキシ亜鉛化反応がコバルト触媒存在下で効率良く進行することを見出した.本反応は,適切なリン配位子を有するコバルト触媒を用い,1気圧の二酸化炭素雰囲気下,亜鉛粉末を還元剤とし,アセトニトリル中,40度で攪拌するという穏和な条件で良く進行する.様々なアルキンに対して適用可能であり,対応するα,β-不飽和カルボン酸が得られた.また,本反応系中に生成する有機亜鉛化合物に対して様々な求電子剤を反応させたところ,対応する生成物を良好な収率で得ることに成功した.さらに,カルボキシ亜鉛化反応の反応系にアクリル酸エステルを添加したところ,アルキン,アクリル酸エステル,二酸化炭素,亜鉛の4成分カップリング反応が進行し,マロン酸モノエステル誘導体が良好な収率で得られることを見出した.
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