研究課題
若手研究(A)
本研究課題では、種々のパーフルオロ化合物の炭素-フッ素結合を位置選択的に活性化(切断)できる遷移金属活性種の創出を目的とし、パーフルオロ化合物の1つであるヘキサフルオロプロピレン (CF2=CFCF3) を0価パラジウム上に予め配位させた錯体 [(PCy3)2Pd(CF2=CFCF3)] をモデル化合物として用い、炭素-フッ素結合の位置選択的に取り組んだ。その結果、0価パラジウム上での炭素-フッ素結合切断を促進するルイス酸添加剤の種類を変えることにより、位置選択的な炭素-フッ素結合の切断が達成されることを明らかにした。すなわち、添加剤として三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体 [BF3・Et2O] をモデル化合物に作用させたところ、末端sp2炭素に結合したフッ素原子が選択的に切断され、パーフルオロ1-プロぺニル基を有するパラジウム(II)錯体を2種類の異性体混合物として定量的に得た。一方、添加剤としてトリスペンタフルオロフェニルボラン [B(C6F5)3] をモデル化合物に作用させたところ、アリル位の炭素-フッ素結合切断が選択的に進行し、カチオン性パーフルオロアリルパラジウム錯体が定量的に得られることを見出した。後者の反応は、遷移金属上でヘキサフルオロプロピレンのアリル位の炭素フッ素結合を選択的に活性化した世界初の例である。この反応において特異な位置選択性が発現する理由を明らかにするため、計算化学的手法を用いて考察したところ、主に嵩高いトリスペンタフルオロフェニルボランに起因する立体的な要因により、もっともパラジウムから遠いアリル位の炭素フッ素結合がされていることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
当該年度の実施計画に掲げていた目的である「炭素-フッ素結合の位置選択的活性化を達成する遷移金属活性種」を開発することができ、順調に推移している。
上述したヘキサフルオロプロピレンの位置選択的炭素フッ素結合活性化に関する知見をもとに、0価パラジウム上における種々のパーフルオロ化合物の位置選択的な炭素フッ素結合切断に取り組み、位置選択性が発現する機構を実験的・理論的手法を用いて体系的に検証する。さらに、遷移金属活性種とパーフルオロ化合物との反応から生じた錯体と、種々の炭素求核剤との量論反応を実施し、新たな炭素-炭素結合形成反応が進行する条件を最適化する。
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