研究概要 |
本研究において、平成25年度は主にチェーンウォーキングを経る1,n-ジエンの環化異性化反応とヒドロシリル化反応を組み合わせたタンデム型反応の開発を行った。まず、シクロヘキセン部位と末端オレフィン部位を併せもつ1,8-ジエンとトリエチルシランを3,4,7,8-テトラメチル-1,10-フェナントロリンパラジウム触媒を用いて反応させると、ヒドロシリル化およびチェーンウォーキングを経る五員環形成反応が進行し、アルキル鎖の末端にトリエチルシリル基が導入されたビシクロ[4.3.0]ノナン誘導体が得られた。特に、ジクロロメタン中、40 °Cで4時間反応を行ったところGC収率は83%まで向上した。本反応は、1,7-ジエン, 1,9-ジエンおよび1,10-ジエンにも適用できた。また、リンカー部位としてもマロン酸ジメチルやマロン酸ジエチル、メルドラム酸由来の四級炭素部位をもつものが適用可能であった。さらに、非環状の内部オレフィン部位をもつ基質も用いることが可能である一方、シランとしてもジエチルメチルシランやエチルジメチルシランも収率よく目的物を与えた。本反応では、まず系中で発生したシリルパラジウム種が基質の末端オレフィン部位へ付加し、チェーンウォーキングによって五員環形成可能な位置までパラジウムが移動する。続いて、パラジウム―炭素間へもう一方のオレフィンが挿入した後にシランと反応し、生成物が得られるとともにシリルパラジウム種が再生すると考えられる。
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