研究課題
パイ共役高分子は、電荷輸送特性・発光特性・エレクトロクロミズムなど、光電子デバイスにおける有力な有機材料の一つとして注目されている。その中で、発生した光をキャビティー中に効率よく閉じ込めて増幅させる、高分子レーザー発振素子実現に向けた研究も多く行われている。光増幅法の一つとして、高屈折率な材料で構成する球体内部で光を全反射させて閉じ込める方法がある。このようにして増幅させた光はWGM)発光と呼ばれる。本研究では、様々なパイ共役高分子からなる自己組織化マイクロ球体1粒子からの発光測定と詳細な解析を行った。パイ共役交互共重合体を溶液中での自己組織化により作製した球体の分散液を、SiO2/Si基板上にスピンコート法により滴下した後、大気下で乾燥し、球を基板表面に固定した。発光スペクトルは、波長405 nmレーザーをマイクロ球のエッジ部分に照射し測定した。さらに、得られたWGM発光と理論計算との整合性、連続照射によるの耐久性評価、曲率によるQ値プロットによるWGM発現の閾値の測定を行った。得られた球状構造体において、直径が2ミクロン以上の球体から、鋭い周期的な発光を観測した。粒径が大きくなるにつれ、鋭い発光の間隔が狭くなり、密集したスペクトルへと変化した。このような鋭い発光は、球内部で全反射しながら閉じ込められた光の干渉によるWGM発光と呼ばれる。共役系高分子は、発光波長領域における屈折率が1.6–1.8程度と、空気の屈折率と比較して大きいことから、球内部において球面に沿う方向に発生した発光は全反射し、外に出ることなく球の最大直径を周回する。1周旋回したところで光の位相が一致する場合に光波が強め合う。このような干渉による光強度の増強の条件は次式 ηπd = nλ (1) で表される。また、理論との整合性や球の表面をTiでコートする事でWGM特性の低下を大幅に低減する事を見出した。
1: 当初の計画以上に進展している
平成26年度は、本提案の基盤となる研究を進め、いくつかの重要な成果を挙げることができ、関連論文2報を発表し、さらに、論文2報を現在投稿中である。また、関連特許を2報提出した。学会発表に関しても、17件の口頭発表を行い、うち5件は国際会議などにおいて英語口頭発表を行った。これらのことより、申請時に計画していた研究を着実に進めることができ、研究結果を良好に発表することができたと考えている。実験を通じて出てきた問題として、π共役高分子がレーザー照射に対して想定以上に脆弱であり、照射光強度を上げると、レーザー発振する前に球体の電子構造が崩れてしまう点が挙げられる。現在、球体を高屈折率媒体で覆うことによる夜光閉じ込め効果の増大と球体の耐久性向上について検討している。
電荷注入によるWGM発光を実現するため、最適な素子の構築を行う。上部電極の作製、マイクロマニピュレーターや導電性AFMによる上部電極とのコンタクト、発光の受光、電荷注入の制御など、デバイス作製と測定系の構築、および検出条件の最適化を行う。形成したマイクロ球体1粒子への光ポンピング(顕微PL法)によりWGM発光現象を確認する。また、励起光強度を閾値以上に高めることによるレーザー発振、極低温下における発光特性の変化や発振特性について確認を行う。また、高導電性高分子からなるマイクロ球体1粒子を用いて、顕微EL測定装置により、1粒子への電荷注入および電界発光特性を調べる。ITO電極基板上にマイクロ球体を分散させ、上部電極(電子注入層)としてAl/LiFを蒸着する。球体の影になる部分に数百nmのギャップを形成することにより、Al/LiF/ポリマー球体/ITOの素子構造を構築する。デジタル光学顕微鏡/電子顕微鏡の同時観察下で、マイクロマニピュレーターを用いて上部電極にコンタクトする。上下電極より電子およびホールを注入し、マイクロ球体内部での電荷再結合により電界発光を発生させる。球体内部に光を閉じ込めることによる電荷注入型WGM発光を実現する。電流密度を高めることで発光強度を向上させ、閾値以上の電流密度でレーザー発振を実現する。また、異なる素子構造として、マイクロギャップ電極間に球体を設置し、電界効果型発光トランジスタ素子を作製する。ゲートバイアスの変調によりホールと電子をバランスよく注入し、チャネル内の電荷再結合により発生した光を球体内に閉じ込めることによるWGM発光およびレーザー発振を実現する。
事務補佐員の経費が不確かであったため。
事務補佐員の雇用費用として使用する予定である。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (43件) (うち招待講演 7件) 備考 (1件) 産業財産権 (2件)
Macromolecules
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http://www.ims.tsukuba.ac.jp/~yamamoto_lab/Homepage_Japanese/toppu.html