研究課題/領域番号 |
25708025
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉村 英哲 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90464205)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | RNA / イメージング / 1分子観察 / テロメア |
研究実績の概要 |
本研究では、申請者らのグループが開発した、新規プローブを用いた生細胞内RNA1分子イメージング方を用いて、現在注目されている非翻訳性RNAの生細胞内可視化解析を行いことを目的としている。平成26年度は、前年度に開発したテロメアリピート含有RNA(TERRA)を対象に、生細胞内1分子イメージングと詳細な動態解析を行った。 TERRAプローブ遺伝子をU2OS細胞内に導入し、プローブを発現させた後、全反射蛍光顕微鏡を用いて観察を行った。同様の観察において、前年度に既に、本プローブが生細胞内のTERRAを選択的に標識し、TERRAの1分子動態を観察できること、TERRAの拡散運動には自由拡散運動と閉じ込め拡散運動の2つのモードが存在すること、閉じ込め拡散運動は染色体末端のテロメア領域上で一過的に生じることがある、などの事実を確認している。これらの結果を基に、本年度は、TERRAの拡散運動について拡散係数を求めるなどの定量的な評価を行い、TERRAとテロメアとの共局在について解析を行った。 その結果、テロメア上で閉じ込め拡散運動を示しているTERRAの拡散係数は、テロメアと比較して1桁大きな値を示した。また、閉じ込め拡散運動の閉じ込め領域面積も、テロメアの拡散領域と比較して1桁大きな値を示した。この結果は、テロメアとTERRAは一過的な共局在を示すが、その間テロメアとTERRAは安定な複合体を形成しているわけではない、と言うことを示している。これは、従来提唱されていたモデルの一つである、TERRAがテロメア複合体に取り込まれて、複合体の安定化に寄与しているというモデルを否定しうる。むしろ、TERRAはテロメアに対してより動的な機能を有していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3カ年にわたる研究の2年目となる平成26年度は、前年度に構築したTERRA可視化プローブを用いて、生細胞内のTERRAの動態の定量的な評価を実現した。具体的には、個々のTERRA分子における拡散運動の軌跡を解析し、拡散係数の算出を行った。 その結果から、TERRAとテロメアは共局在は示すものの、安定した複合体を形成しているわけではないという、従来考えられていなかった知見を得ることに成功した。この知見は生細胞内で1分子動態解析を実現したことで初めて得られたものであり、本研究の順調な進展を示している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、TERRAの動態についての定量解析を行うことで、TERRAとテロメアとの間に複合体を形成しない共局在が存在していることを示した。平成27年度にはこの動態解析をさらに進め、TERRAの機能発現機構の解明に迫る。 具体的には、テロメアとTERRAの分布についてサブマイクロメートルスケールで統計解析を行い、テロメア周辺におけるTERRAの閉じ込め拡散運動が生じる起源について解析と考察を行う。また、テロメア複合体タンパク質とテロメア、TERRAとの同時1分子観察を行い、その運動および分布について統計解析を行うことで、TERRAの生理機能についても解析を行う。 以上の解析・考察を通じ、1分子動態から解明される、TERRAの運動を規定する因子とTERRAの生理機能についての解明を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度には、本研究を進めるために最も効果のある長時間観察および高速高感度観察を実現するためのステージインキュベーターおよびイメージインテンシファイヤーの選定を行った。これら製品を次年度に購入予定である。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、より長時間の細胞観察を行うために顕微鏡ステージ用インクベーターを購入する。また、より高感度高速な蛍光1分子観察を行うため、イメージインテンシファイヤーを購入する。
|