研究課題/領域番号 |
25708026
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高岡 洋輔 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (80599762)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 蛋白質 / 受容体 / イメージング / サイトカイン |
研究実績の概要 |
本系では、ケモカインや成長因子などのタンパク質性因子に対する細胞内在性の受容体が、いつどこで活性化されるかを解析する技術を開発することを目標として研究を展開する。前年度までにモデルケモカインレセプターやサイトカインレセプターの生細胞表層での特異的ラベル化を目的として、リガンドサイトカインの人工機能化と、レセプターの過剰発現系におけるラベル化を達成した。本年度はこれら確立した技術を、抗体をリガンドに据えてその抗原となる細胞膜受容体の特異的ラベル化に成功し、この技術を用いて細胞表層受容体のラベル化サイト同定を行うことで、生細胞表層での抗原・抗体反応の3次元的構造学的知見を得ることに成功した。今後、免疫細胞等に内在的に発現しているケモカインレセプターを標的としたラベル化、およびその可視化を達成し、細胞遊走等の生理応答におけるレセプターの局在変化などを詳細に解析する予定である。さらに標的としているレセプターは様々な疾患に関与することから重要な薬剤標的ともなっており、特異的ラベル化によって得られるバイオセンサーが、薬剤の細胞系スクリーニングにも展開可能となることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、モデル系として様々なサイトカインー受容体の組み合わせを用いて、これらの相互作用をリアルタイムにイメージングする技術の確立を目指してきたが、その可視化のみならず、本年度はサイトカインや抗体と受容体との相互作用の詳細を解析する技術にも展開することができた。また、これらのラベル化受容体の動態観察は内在性蛋白質をもとに達成した例はほとんどないが、すでに二つの標的受容体において内在性蛋白質の可視化に成功しつつある。このように受容体の可視化・制御技術としてだけでなく、構造学的知見をももたらした点で、本研究が当初の計画を超えた新たなサイトカイン受容体解析技術になりうるものと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに構築したサイトカインの人工機能化、および内在性受容体の動態観察を実現する強力なツールとして確立する。特にケモカイン受容体で細胞遊走活性に深く関わる標的を選択し、その内在性蛋白質の活性化メカニズムを解析することで、細胞種別による活性化機構の違いや、活性化リガンドに応じた局在変化等の違いが明確になり、ケモカインが関わる複雑な生理応答制御機構の一端を解明できるものと期待される。一方、サイトカイン・ケモカイン受容体が起こすタンパク質間相互作用のモデル系として新たに、植物ホルモン受容体にも視野を広げ研究を展開する。植物ホルモンの多くは2種のタンパク質間相互作用を糊付けする誘導因子であることが多く、その相互作用を巧みに制御する分子の創成を目指す。これにより、植物の生長や分化等の重要な役割を担う植物ホルモンの生理活性の制御につながるものと期待される。これら一連の研究は、合成化学からケミカルバイオロジー、ひいては動物細胞における分子生物学と植物生理学とをつなぐ様々な研究手法を独自に組み合わせた、新たな「タンパク質間相互作用制御技術」として提案できるものと期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画における目標として掲げたケモカイン受容体のラベル化については、過剰発現系で確立できた。今後これを内在的に発現する細胞腫へと展開するためには、いくつかの培養細胞や、種々の抗体を用いた免疫染色、ウエスタンブロッティング等の生化学試薬等々が大量に必要となることが予想されたため、消耗品費として次年度に繰り越す計画に変更した。その中には、多くのケモカインレセプターに対する抗体は市販品が機能しないことも多く、抗体を新たに生産する等の消耗品費等の高価な試薬類が含まれる。
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次年度使用額の使用計画 |
ケモカイン受容体のラベル化を示す免疫染色やウエスタンブロッティング等に必要な一次抗体、蛍光色素をコンジュゲートした二次抗体等、あるいはブロッティングに必要な検出試薬等の高価な生化学試薬など、様々な消耗品を購入予定であり、これらの多角的な解析によってより精度の高い受容体の活性化機構の解明を目指す。同様にして植物ホルモン関連研究においても、ペプチドやタンパク質発現系の構築等に必要な生化学試薬購入に使用する予定である。
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