循環型社会構築のために化石資源などの枯渇性資源ではなく、再生可能な資源を化成品原料として利用する研究が求められている。特に、食糧と競合しない非可食性のセルロースから有用物質に変換する技術が重要である。本研究では、非可食性バイオマス資源であるセルロースを直接イソソルビド(高機能化成品原料)に変換する担持金属触媒および反応システムの開発に取り組んでいる。この研究により硫酸などの強酸を使用せず、水素化分解反応・脱水反応を水溶媒中にてワンポットで進行させる新しい環境調和型化学を開拓できる。現行の技術でセルロースから複数の反応ステップを経ることでイソソルビドへ変換可能であるが、最終ステップとなるソルビトールの脱水反応によるイソソルビドの生成は、強酸である硫酸を用いる必要がある。従って、反応後に中和・中和により生成する塩の分離・生成物の精製と煩雑な過程が必要である。本反応プロセスでは、反応後の中和操作が不要であり、非可食性バイオマスのセルロースから有用化学物質であるイソソルビドへと一段階で変換可能とする。 セルロースの水素化分解反応・ソルビトールの脱水反応を水溶媒中にてワンポットで進行させる高活性な担持金属触媒と固体酸(イオン交換樹脂)の開発および反応条件の最適化を行った。担持白金触媒を用いたときは、良好な結果は得られなかったが、担持金属触媒としてルテニウム/カーボンブラック、イオン交換樹脂としてAmberlyst 70を用い、反応条件を最適化することによりセルロールからイソソルビド(収率55.8%)への変換が可能であることを明らかにした。
|