研究課題/領域番号 |
25708032
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
安田 琢麿 九州大学, 稲盛フロンティア研究センター, 教授 (00401175)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヘテロ元素 / 電子共役分子 / 自己組織化 / 電荷輸送 / 有機電子デバイス |
研究実績の概要 |
特異的な分子集積構造を自発的に形成することで高速電荷輸送特性を発現する有機半導体および有機トランジスタの開発に成功した。ジチエノチオフェン誘導体は、精緻な分子集積・配列構造を有する結晶性マイクロリボン・シート構造を自己組織的に形成する。マクロスケールで特異的な形態を有するマイクロリボン・シートは、分子間S…S相互作用を駆動力にして形成されており、これが極めて効率的な電荷輸送チャンネルとして機能することを明らかにした。マイクロリボンを用いた有機トランジスタにおいて、従来の有機半導体やアモルファスシリコンを遥かに凌ぐ10 cm2/Vsを超える高速電荷移動度を達成した。有機半導体において従来定説的であった分子間π-π相互作用を用いずに高速移動度を得ることに成功した。バンド計算より電荷輸送方向に大きなバンド分散性が認められ、バンド伝導性が支配的となることを物性・理論の両面から明らかにした。 前述の結果を踏まえて、更なる電荷輸送の高効率化を目指し、高度縮環構造を導入した有機半導体材料を開発し、電荷輸送およびトランジスタ特性の評価を進めた。その結果、マイクロ構造体を用いた有機トランジスタにおいては、30 cm2/Vsを超える高キャリア移動度を達成した。更に、低温における電気物性測定の結果、温度低下に伴い移動度が上昇するバンド伝導由来の電荷輸送特性の観測にも成功している。多重のヘテロ元素相互作用を活用する分子集積法により、バンド伝導機構基づく超高速電荷輸送特性が発現する全く新しい材料設計といえる。また、実用的なデバイス開発を視野に入れて、この高速電荷輸送チャネルを二次元的に拡張するアプローチについても検討を進めた結果、プリンタブルで、かつ分子配向の揃った有機結晶超薄膜(膜厚: 約10~100 nm)がディップコート法により作製できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
より強固な多重へテロ元素相互作用が効果的に寄与する有機半導体材料系を構築できたことにより、有機半導体では最高レベルのキャリア移動度が実現できている。また本系を結晶性二次元薄膜に展開できる端緒を見出しており、当該研究は計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
有機半導体の高速電荷輸送とトランジスタの今後の展開に関しては、より強固な多重へテロ元素相互作用が効果的に寄与する有機半導体材料を開発できれば、多結晶シリコンに匹敵する前例の無い超高速電荷輸送機能を実現できる可能性がある。また、既に検討を進めている溶液プロセスを用いた一軸的な分子配向性を有する有機結晶超薄膜作製技術を活用することで、次世代の高性能有機半導体を用いたプリンテッドエレクトロニクスへの展開が期待される。
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