研究課題
一般的に、高分子ゲルには空間的な粗密が存在し、その不均一性は力学特性に影響を及ぼす。この空間的な不均一性は、小角中性子散乱実験などにより存在については確認することができるものの、どの程度のサイズのものが、どのくらいの量、存在しているのかについて、詳細に知ることは困難である。ましてや、その不均一性が高分子ゲルの力学特性にどの程度影響を及ぼすかについて調べることはさらに困難を極める。本研究では、空間的な不均一性を持たない均一な高分子ゲルであるTetra-PEGゲルに、制御された空間的不均一性を導入することによって、空間的不均一性の力学特性へ及ぼす影響について調査した。具体的には、様々にサイズを調整した多分岐高分子をゲル内に導入することにより、仮想的な空隙を作製し、それを空間的不均一性と見立てて議論を行った。実際に、数十nm程度のサイズを持つ多分岐高分子をゲル中に導入すると、ゲル化反応の反応率は低下しないものの、弾性率のみが低下するという結果を得た。この結果は、網目中に粗な構造が形成されたことにより、弾性率が低下したことを示唆している。多分岐高分子のサイズや導入量を変化させたところ、導入量の増大に従い弾性率が低下すること、またその低下の度合いはサイズの大きいものほど顕著である事が明らかになった。この結果は、空間的不均一性を定量的に議論するための重要なデータとなりうると考えられる。これまでの調査により、高分子ゲルの構造におけるダングリング鎖、絡み合い、空間的不均一性が弾性率を初めとする力学特性に与える影響について明らかにすることがで来た。今後は、さらなる検討を行い、不均一な網目構造の力学特性を記述するためのモデルの構築を行っていきたいと考えている。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Biomedical Engineering
巻: 1 ページ: 0044
doi:10.1038/s41551-017-0044
Angewandte Chemie International Edition
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DOI: 10.1002/anie.201602610
http://www.tetrapod.t.u-tokyo.ac.jp/sakai-tei/TetraNet/Top.html