研究課題
腐食中の自己組織化によって生成するナノポーラス金属には、従来のナノ粒子触媒の欠点を払拭した新しい触媒としての可能性が、最近の申請者の研究によって示された(T. Fujita et al. Nature Materials 11 (2012) 775)。本研究の目的は、金属科学・電気化学に基づいて学理を構築し、ナノポーラス金属をより実用的で革新的な触媒へと発展させることである。ナノポーラス触媒として代表的なナノポーラスAuがある。この触媒は、室温でCO浄化反応であるCO酸化反応(CO+1/2O2→CO2)が起こる有望な触媒であるが、反応時間にともなって、組織が粗大化して劣化していく。また、残留Agが反応中に表面一部に凝集していることも明らかとなった。したがって、構造の粗大化やAgの凝集が触媒の劣化に繋がる主原因であることはわかるが、実際どのような過程で粗大化していくのかは明らかではなかった。そこで、ガス環境セルを備えた独自の超高圧電子顕微鏡を用いることで、CO酸化反応が起こっているその場を原子レベルで観察した。この詳細な観察のなかで、1,表面拡散をともなって粗大化が起こっていること、2、面欠陥として知られる双晶がそのピン留めに有効に作用することが分かった。具体的には、双晶の3重点でピン留めされ、これがなくなると表面拡散がすばやく引き起こされた。双晶がない所はこのようなピンニング効果は観察されなかった。本結果は、ナノポーラス触媒の劣化過程を原子レベルで初めて明らかにした結果であり、また、結晶欠陥によるピン留め効果は、ナノポーラス触媒だけでなく不均一系触媒全般に適用できる重要な材料設計指針になった。
2: おおむね順調に進展している
ナノポーラスAuだけでなく、他の合金系も計画通りに進んでおり、実験のセットアップも完了しているので。
熱処理中のナノポーラスAuの粗大化過程の電子顕微鏡によるその場観察や貴金属を含まない合金系のNO還元触媒評価の実施などを行う予定である。
排ガス分析装置を再度考慮し、より汎用性のある分析システムに変更したが、当初の分析装置より安価に手に入れることができたため。触媒特性で良い結果が得られており、その触媒の大量生産を目指すため、その材料費や合成・製造装置に使用する予定である。
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Nano Letters
巻: 14 ページ: 1172-1177
10.1021/nl403895s