研究課題/領域番号 |
25708037
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
勝又 健一 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 助教 (70550242)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光触媒 / 層状・層間化合物 / 人工光合成 / 二酸化炭素 |
研究概要 |
本研究は、近年光触媒としての機能が明らかにされつつある層状複水酸化物(LDHs)を母材として人工光合成システムの構築を検討した。助触媒(Ru, Rh)を基本構造内へ置換固溶したZn-Cr LDHの合成を行い、そのCO2光還元特性を評価した。助触媒Rhは、CO2の還元によるCO生成を促進し、助触媒Ruは水の酸化による酸素生成を促進する助触媒として機能することを明らかにした。LDH構造内へ置換固溶された助触媒は,CO2光還元プロセスにおいて生成する活性中間体の活性化エネルギーを低下させると共に,酸化還元反応に必要となる水の解離よるプロトン(H+)生成を促進することで、特性向上に繋がったと推察している。また、層間アニオンを炭酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオンへ交換したLDHにおいてCO2還元特性に差異が認められ、生成したCOの一部が層間の炭酸イオンを起源としている可能性を示した。一方、水熱合成法により高結晶性のLDHを合成し、光触媒反応における結晶性の影響を検討した。結晶性の多寡によってCO2還元特性が変化し、結晶性を向上させることでLDHの光触媒特性を増強できることを明らかにした。他方、植物の光合成が採用している多段階励起を利用したZ機構が、光触媒反応における近年のトレンドになっている。本研究ではLDHとヘテロポリ酸の複合体を作製し、CO2還元特性を評価した。複合化によりLDHのCO2還元特性は向上し、Z機構の発現を確認した。以上より、LDHが、助触媒の置換固溶、結晶性の制御、他材料との複合化という一般的な光触媒の高活性化プロセスによって特性向上が可能であることを示し、未だ解明に至っていない層状複水酸化物の光触媒反応メカニズム解明への糸口を提示することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
層状複水酸化物(Zn-Cr LDH)と多電子還元光触媒(ヘテロポリ酸)の複合体を作製することに成功し、LDH単体と比較してCO2光還元特性を向上させることができた。複合体の構造解析にまでは至らなかったが、作製方法の確立と特性向上という当初の目的を達成することができた。さらに、助触媒として機能すると予想されるルテニウムとロジウムをシート状構造内にドープすることで、飛躍的にCO2光還元特性を向上できる新規な水酸化物系光触媒を見出した。以上より、当初の目的をほぼ達成できただけではなく、新しい材料を見つけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
層状複水酸化物(LDH)と多電子還元光触媒の複合体を検討し、高効率なCO2光還元材料を作製する。作製するにあたって均質な複合体を得るために次の三つを検討する。「LDHの合成過程に多電子還元光触媒を挿入」「LDHの再構築を利用した多電子還元光触媒の挿入」「単層剥離LDHを用いた多電子還元光触媒の挿入」作製した複合体についてX線回折装置(XRD)、ラマン分光、X線光電子分光法(XPS)、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)、透過電子顕微鏡(TEM)などで構造解析を行い、LDHの層間に挿入された多電子還元光触媒の状態を調査する。また、ICP発光分光分析により化学組成を決定し、放射光粉末X線回折からLDHの精密結晶構造と電子密度分布を明らかにする。 二つの反応場(気相と液相)を作製し、作製した複合体試料のCO2光還元活性を評価する。気相ではCO2ガスを脱イオン水中にバブリングし、CO2ガスと水蒸気を反応場にフローして光照射時間に対するCO2と還元生成物であるCOをガスクロマトグラフ(GC)で定量する。液相は脱イオン水中に試料を置きCO2ガスをバブリングしながら光照射して還元生成物であるCO, CH4, HCOOH, CH3OHをGCと液体クロマトグラフ(HPLC)で定量する。液相の場合はスターラーで撹拌を行う。二つの反応場による活性を比較し、CO2光還元活性と還元生成物の反応場依存性を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
・繰越額が生じた状況 当初購入を予定していた評価装置(マイクロGC)の購入を延期したため ・平成26年度分予算とあわせた使用計画 購入を延期したマイクロGCや試薬の購入、26年度に購入を予定している液体クロマトグラフの購入費に充てる
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