研究課題/領域番号 |
25708039
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上野 和紀 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (10396509)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 電界効果トランジスタ / 酸化物半導体 |
研究概要 |
本研究はイオン液体を用いて革新的な機能性を持つ電気二重層トランジスタの開発を目指すものである。そのプラットフォームとして、多数の伝導電子があるにもかかわらず、強い電子間相互作用によって電気を流さないモット絶縁体に着目した。具体的には強い電子間相互作用をもつ層状物質、三角格子を持つ系にたいしてイオン液体ゲートを組み合わせた素子の開発を目指している。 本年度は装置導入による研究環境の整備と層状のデラフォサイト構造を持つ p 型半導体 CuAlO2 のへき開面を用いた電気二重層トランジスタの開発を行った。フラックス法で作成した平板上のCuAlO2 単結晶を折ることでへき開面を作成した。この面をまたぐようにして、 Pt/Ni および Au/Ni を EB 蒸着によって作成したところ、オーミックなコンタクトと電気化学的に安定な表面を併せ持つ電極が得られた。続いてイオン液体 DEME-BF4 を用いて電気二重層トランジスタを作成、良好なp 型トランジスタ動作が得られた。 さらに、半導体表面がへき開や酸素プラズマ、アルゴンプラズマによる表面によりどのように変化するかを知るため、広いへき開面を得ることが出来る酸化物半導体 Ga2O3 とイオン液体の界面を用いてインピーダンス評価とトランジスタのデバイス評価を行った。その結果、へき開面そのものは化学的に活性で不安定であり、酸素、もしくはアルゴンプラズマで1分程度の表面処理を行うことで表面に安定な空乏層を形成した電気化学界面が得られることを見出した。 今後、デラフォサイト構造に適した表面処理の手法をしるため、CuAlO2へこの研究を広げるとともに、より大型の単結晶作成を試みる。また、遷移金属を含むモット絶縁体のデラフォサイト構造物質や層状のモット絶縁体でのモットトランジスタ、p,n両側動作をするトランジスタの作成へ研究を進めて行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の実施計画では界面評価を行いながらデラフォサイト構造をもつ酸化物単結晶への電界効果デバイスの作成と電極・界面の最適化を行うこと、また214系構造の薄膜を開発することを記載した。 その結果、デラフォサイト構造をもつp型酸化物 CuAlO2について電極作成を行い、Pt/NiやAu/Niでオーミックな電極が作成できること、へき開面をまたぐように電極を作成することで比較的良好なデバイス特性が得られることを見出してきた。また、真空プローバを用いて500K程度の高温から4K程度の低温までインピーダンス評価、デバイス評価をできるシステムを立ち上げた。これらの装置を用いて来年度はより迅速な研究の進展が期待でき、順調に研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、酸化物半導体を用いて室温でデバイス動作させている。また、さまざまな表面処理をした際の固液界面のインピーダンスを用いて、表面処理と界面欠陥の関係を明らかにしつつある。 今後はモット絶縁体単結晶へ同様の手法により、p,n両側で動作可能なトランジスタを作成していく。また、へき開面でのデバイス動作が良好なことから、さらにへき開性のよい別のモット絶縁体単結晶を探索し、デバイス開発できないかを検討していきたい。
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