研究実績の概要 |
本研究はイオン液体を用いて革新的な機能性を持つ電気二重層トランジスタの開発を目指すものである。そのプラットフォームとして、多数の伝導電子があるにもかかわらず、強い電子間相互作用によって電気を流さないモット絶縁体に着目した。 昨年度は主にバルク単結晶を用いた p,n それぞれの動作をするデバイスの開発を行ってきた。本年度はp型,n型バルク単結晶を用いたデバイス開発を行うとともに、ペロブスカイト類似構造を持つに次元性の高い単結晶の作成を試みた。 p 型, n 型のCuAlO2単結晶とGa2O3単結晶を用いた電気二重層トランジスタにおいて、低温での伝導状態を調べた。一般に半導体では十分なキャリアドーピングにより絶縁体から金属への転移が見られるが、どちらのデバイスも絶縁体状態のままで、 200 K 以下の低温では全く電気が流れなくなった。また、特に Ga2O3 では低温測定用のクライオスタットに移送する際にデバイスが劣化し、ゲート印加時の電気伝導度が大きく低下した。低温で金属状態が実現できなかった理由はこのようなデバイスの劣化と、単結晶の品質が低いために低温で移動度の低下が起きるためではないかと考えている。そのため、より良質の単結晶を用いて改めてデバイス作成、評価の必要があると考えている。 また、二次元性の高いモット絶縁体単結晶を作成するため、SrCuO2 など電子相関の強いペロブスカイト類似構造物質の単結晶薄膜の開発を行った。SrCuO2 では DyScO3 基板の上に La 10% ドーピングの薄膜を作成することで、厚膜で超伝導転移を示し、10 nm 以下の極薄膜で絶縁体的な伝導が得られた。この絶縁状態は二次元性の高い状態での電子の局在によるものと考えられ、電界効果を組み合わせることで電界による絶縁体から金属、あるいは超伝導へのスイッチを起こすデバイスが実現できると期待される。
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