研究課題
本研究では、一次相転移を示す強相関物質に特徴的な相競合状態を利用して、微小な電圧で物質の巨視的な相制御を可能にする新しい相転移トランジスタを開発することを目的としている。研究代表者らはこれまでに、強相関物質VO2では、電界効果による表面への静電的な電荷蓄積に伴ってバルク全体で相転移が起こることを見出しているが、これは従来の半導体トランジスタにはない機能であり、新しいデバイス応用が期待される。今年度は①VO2における単一ドメインの電場応答の評価、②他の物質系への展開、を二つの軸に研究を行う予定であったが、VO2電気二重層トランジスタの動作モデルを巡って国内外で多くの議論が噴出している現状を踏まえ、③VO2電気二重層トランジスタの動作機構の解明を第一優先に研究を行った。まず、動作可逆性に対する基板の影響を検討し、基板に格子整合性の良いTiO2を用いたVO2/TiO2では動作が完全に可逆的なのに対して、格子整合性の悪いAl2O3を用いたVO2/Al2O3では不可逆的になることを見出した。次に、これらの試料を大型放射光施設SPring-8に持ち込み、X線吸収分光法により電場印加前後の価数変化を調べたところ、VO2/TiO2では変化が見られないのに対してVO2/Al2O3では明瞭な化学シフトが見られた。以上の結果は、VO2/TiO2では静電モデルが支配的であり、VO2/Al2O3では化学反応モデルが支配的であることを強く示唆しており、試料の品質によって支配的な機構が異なり得ることを示唆する極めて重要な成果である。これらに加えて、当初の計画である①や②にも取り組み、①ではデバイスが小さくなるほど電場応答が先鋭化する傾向にあることを見出した。また、②では銅酸化物高温超伝導体における超伝導の電場制御に取り組み、電界効果によって超伝導転移温度を大きく制御可能であることを見出した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
European Journal of Inorganic Chemistry
巻: 2014 ページ: 3841–3844
10.1002/ejic.201402025
固体物理
巻: 49 ページ: 381-394