研究課題/領域番号 |
25709001
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 展 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70550143)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 柔剛特性 / 可変機構 / 8回回転対称 / 正方セル |
研究実績の概要 |
多種多様な環境下に応じて剛性を自動調整できる構造が存在すれば,従来の枠組にはない機械・構造設計が可能となる.本研究では,可変剛性構造体の基礎研究として,異なる荷重条件下で剛性を受動的に切り替える「柔剛特性」という概念を提唱し,その具現化に注力する. 上記の目的に即して,平成26年度は提案した2次元可変機構構造の平面模型の設計開発に取り組んだ.当該模型の構成要素をアルミニウムで加工作製したが,組立後の動作において部材間が干渉することが分かった.そのため,設計図面を一度見直し,中心の8配位結合節および正方セルを構成する2位節の加工設計を修正した.加工修正された構造より,局所的な押し込みと大域的な押し込みの2種類の圧縮作用によって当該模型が異なる角度のセル構造(ダイアモンド型構造と正方形型構造)に推移することを確認した. また研究計画調書に記載したとおり,予期せぬ摩擦負荷を防ぐための模型開発支援の構築を目的として,摺動解析モデルの開発に従事した.そして,金属・樹脂など種々の材料に対して構成要素の弾性率と押し込み力から接触面積率と動摩擦係数を導出し,その動摩擦係数に対して系全体の機構動作に必要な駆動力を見積もることに成功した. 並行して,マイクロポーラはりを用いた3次元大変形下の非線形有限要素解析へのモデル拡張,および周期セル構造に対応した骨組構造の均質化有限要素法のモデル開発に従事した.これらによって,2次元平面に限定された当該構造を厚さ方向に積層したセル構造に対して3次元はり要素による非線形有限要素解析が可能となり,その解析結果から面外方向に局所的な変形をする負のポアソン比に類似する特殊な形状を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【研究実績の概要】で示したとおり,2.5次元マクロ模型の加工組立が完了し,その動作確認は達成した.また,研究計画調書に示したとおり,模型開発支援に向けた最適構造化システムの開発(摺動解析モデルの開発,および均質化有限要素法による3次元大変形解析モデルの開発)は着実に成果が出始めており,特異な面外変形を誘起する新規積層構造体などを明らかにしている.しかしながら,双剛性特性を発現するセル構造体の3次元化に関しては大きな研究成果を得ていないため,総合的には「やや遅れている」と判断する.一方で,工学分野とは異なる国際会議(Symposium on Computational Geometry (SoCG2014))のワークショップにて招待講演を行った.このような分野横断的な交流によって本研究に関するより大きな視野を得ることができたことは本研究の発展性という観点から評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,2.5次元マクロ模型の双剛性特性を定量的評価するための試験方法の開発に取り組む.具体的には,3x3セルの大きさに拡張し,各セル間を変位制御が正確に行えるように連結する.また,構成要素の剛性を調節した材料選定を行い,引張圧縮試験機に対応したチャック用冶具の設計開発を実施する.並行して,セル構造体を有限セルから周期セルに変更したときも同様に双剛性特性のメカニズムが発現するかどうかを数理モデルをベースにして考察し,その結果に併せて,変位制御型によるリニアガイドの設計など模型実験の仕様を逐次改良する.また,平成26年度には達成できなかった3次元小型構造体模型の開発にも引き続き取り組み,開発中の最適構造化システムと連携させた当該セル構造体の3次元化にも従事する. 次に,模型開発支援に向けた最適構造化システムの一連の開発に引き続き従事する.具体的には弾性体-金属間の摩擦予測システムの構築とそれによって得られた摩擦係数をパラメータとした摺動解析とはり要素有限要素解析の連成解析モデルの開発,そして周期セル構造の弾性特性を予測するためのはり要素を用いた均質化有限要素解析および非線形有限要素解析の開発に取り組む.
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次年度使用額が生じた理由 |
双剛性特性を発現するセル構造体の3次元化の提案において大きな成果が得られなかったため,具体的な3次元小型構造体模型の設計開発の段階に至ることができなく,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画調書に記載したとおりに3次元小型構造体模型の設計開発費として3D-CADソフトウェアのライセンス費や年度末に購入した3Dプリンタの材料費に割り当てる予定である.また,本研究成果を発表するために,学会参加費/旅費および論文投稿費などを計上している.
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