本課題では,異なる荷重条件下で剛性を受動的に切り替える「柔剛特性」を有するセル構造体の研究に従事した.最終年度にあたる平成28年度の研究実績を以下に記す. 本年度は2つの角度状態変数によって定式化された2自由度系bar-and-jointモデルを考案した.そして,ポテンシャルエネルギーの停留条件から内部剛性変数(内挿ばね定数)を消去して導かれるg関数を定義し,その超平面の振る舞いを調査した.その結果,鞍点をもつg関数曲面の変動によって角度状態変数が遷移することを明らかにした.次に,弱い非線形項を用いて近似した簡易モデルが類似の遷移メカニズムをもつことを示し,その遷移点の厳密解を導出した.さらに,遷移状態のおける2つの角度状態変数の主平衡経路と2次平衡経路が1次曲線になることを証明し,それらと対応付けられる無次元化荷重-変位曲線を導出した.最後に系のポテンシャルエネルギーのヘッセ行列から系の安定性を分類した.以上より,これまで数値解析解でしか議論できなかった柔剛特性の遷移メカニズムに対して数学的考察を与えることに成功した.一方,実機開発においては,正方セル部を4リンク機構に置き換えた単位ユニットを直列に配置させた構造模型を作製し,2つの形態(正方パターンとダイアモンドパターン)に遷移することを観察した.当該模型を基本構造とすることで数理モデルでは解析困難である動的変形挙動を計測する実験環境が構築できた. 上記の研究と並行して,模型開発支援に向けた最適構造化システムの高度化(摺動解析モデル,均質化有限要素法の開発,はりの3次元弾塑性モデルの提案,および3Dプリンタによる樹脂試験片の開発)に従事した.それらの研究成果の一例として,3次元直交異方性積層セル構造体を新しく設計開発し,単軸引張試験によって当該構造体が積層方向に高い負のポアソン比を発現することを計測した.
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