本研究では、マルチフェーズフィールド(MPF)法、結晶塑性有限要素(CPFE)法、結晶塑性高速フーリエ変換(CPFFT)法、均質化法などの各種数値シミュレーション方法を活用し、高強度鋼及びアルミニウム合金などの構造材料の機械的特性を向上させるミクロ組織の最適設計法の開発を目的としてきた。 平成28年度の研究においては、平成27年度までに開発した新しいMPFモデル(非平衡MPFモデル)を、高強度鋼の基本化学組成であるFe-C-Mn合金及びFe-C-Mn-Si合金のフェライト+オーステナイト2相温度域での繰返し変態挙動の解析に適用し、実験で観察される繰返し変態における界面移動と溶質拡散の関係、特に停留ステージの発現メカニズムを明らかにした。 また、金属板材のミクロ組織情報から機械的特性を予測するための計算方法として、平成27年度までに均質化法に基づくCPFE法による数値材料試験法を開発した。平成28年度では、数値材料試験法を自作FEMソルバだけでなく汎用のFEMソルバ(ABAQUS)でも実施可能であることを示し、平成27年度までに実証したアルミニウム合金への適用のみならず、極低炭素鋼板への適用とその実験検証を行った。さらに、アルミニウム合金の成形性を決定づける、集合組織の予測のためのCPFFT法とMPF法による再結晶粒成長シミュレーションを提案した。この再結晶シミュレーション法は、鉄鋼材料への適用も可能である。平成28年度後半からは、アルミニウム合金板材での再結晶組織と二軸引張変形を例題として、上記のMPF法と数値材料試験法で得られる計算結果を基礎データとし、応答局面法による最適設計法の検討を開始した。今後も、上記研究で得られた各種シミュレーション手法と応答局面法を用いた最適設計法を継続して開発する。
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