研究課題
本研究は,サブミクロン材料が有する特異な強度特性(降伏強度の寸法依存性)を積極的に利用して,水素脆性の基本メカニズムの一つと考えられている格子脆化説(Hydrogen Enhanced Decohesion; HEDE)を実験的に検証することを目的としている.具体的には,試料周辺の局所領域にガス環境を作ることが可能な超高圧透過型電子顕微鏡中において,寸法効果によりバルク材に比べて塑性変形が大きく抑制されたサブミクロン材料を用いて定量的な破壊試験を実施し,水素による原子間結合強度低下の有無を直接確認する.三年計画の最終年度であるH27年度は,水素脆性が懸念された窒化珪素(SiN)/銅(Cu)の薄膜積層界面を対象とした実験に着手した.前年度までの経験を生かし,界面端の応力特異性が高い試験片形状を採用した.その結果,界面端の応力拡大係数で表現した剥離破壊発生強度は,水素ガスの存在下で顕著に低下することを確認した(論文投稿中).昨年度に評価したシリコン(Si)/Cuでは強度低下が見られなかったことから,材料種による水素脆性への感度の違いも明らかになった.また,引き続き多結晶材料(Ni3Al)の単一粒界を対象に,粒界の方位差・構造と水素脆性発現の関係を詳細に検討した.その結果,ランダム粒界における水素脆性は方位差に依存する一方,双晶境界は方位差が大きいにも関わらず耐水素脆性を持つことを確認した(論文発表済み).更に,界面における水素の存在状態を電子エネルギー損失分光法(EELS)により解析する上で顕在化した試料汚染の問題についても斬新な解決策を見出し(論文投稿予定),現在も引き続き水素分布の可視化を目指した実験を継続中である.
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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