研究課題/領域番号 |
25709009
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研究機関 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
野々村 拓 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (60547967)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 宇宙科学 / 超音速噴流 / 空力音響 / 数値流体力学 / 実験流体力学 |
研究実績の概要 |
本研究では数値解析と実験を併用し,超音速噴流から発生する音響波の数値解析の精度の向上を狙う. 実験に関して低圧環境下で超音速ジェットを発生させる装置を拡張/利用することで音響波の発生メカニズムを議論した.まずPIV,流体音響場観測装置により流体,音響データ取得を可能にし,作成した複数の超音速ジェット用のノズルを利用して初期せん断層の状態がジェットおよび音響波に与える影響を調べた.特にノズル内につけた突起の有無によりせん断層の乱れ度が変わり,突起がある場合にはせん断層厚さが線形に成長するのに対し,突起がない場合にはせん断層厚さが乱流遷移と思われる場所で急激に厚くなること,音が大きいことなどを明らかにした.これらは昨年度行った数値解析の結果の傾向と一致しており,数値解析から得られた「乱流遷移までのプロセスを解像することで定量的な予測が出来る」昨年度の結論を支持するものである. 次に,昨年度の乱流遷移するジェットの数値解析結果を線形安定解析でより詳細に議論した. LESの結果では線形安定解析の予測通りの不安定モードが成長しており,軸対称モードでなくヘリカルモードがより不安定と示した.また最も成長するモードよりもノズル入り口で下流で発生した音響波によって与えられるモードのほうが振幅は大きいため,このモードが乱流遷移および音響波の発生に大きく寄与すると考えられた.このため単純な線形安定解析だけでなく下流での音響放射効率や音響波がせん断層に撹乱を与える際の受容性なども定量予測に重要とわかった. またノズル内で撹乱を与えたジェットな数値解析をJAXAのスーパーコンピュータを利用して行ってきた.格子解像度の確認などまだ信頼性の確認が不十分ではあるものの撹乱の有無で音響波のレベルが2dB程度変化すること,指向性の変化が有ることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験に関してはこれまでに実験設備の拡充をおおよそ終え,実験データの取得に入っており順調に進んでいる.音響データの取得に関して低圧化といった非常にシビアな環境のために,スペクトルデータの取得に一部問題が有ることが確認された.得られたデータを精査し問題を切り分けることでより精度の高いデータを得られるようにしたい.ただし,定性的な評価に問題はないため,実験データ取得等はこのまま継続する.音響波の一方でチャレンジングな超音速流れのPIVには成功しており,ジェットの発達率などの測定に成功し,昨年度得られた超音速ジェットの数値解析の結論を示唆する結果が得られた. 数値解析に関しては,昨年度の数値解析結果を説明できるよう線形安定性解析ツールを利用した解析を実施し,線形不安定で説明できること,下流で発生した音響波による撹乱のノズル入り口での受容が重要であることなどの重要な知見を得た.またノズル内で撹乱を与えた場合の数値解析を実施し,音響波の強さが撹乱の有無で2dB程度変わること,指向性が変わることなどの先行的な知見を得ており,順調に進んでいる.別途行っている一様等方性乱流の解析により,乱流の微細構造から発生する音響波のモデリングにつながる知見を得るとともに,時間発展せん断層の議論ができるようにツールの整備を行うなど順調に研究が進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度には,25,26年度に用意した実験システムおよび数値解析コードを用いて1)乱流の大規模構造、2)乱流の微細構造から発生する音響波を解析する.大規模データが取得できるためデータストレージ等を用意する.また流体現象の理解を行うためにデータマイニングを利用する. 特に,乱流境界層流入の超音速ジェットを解析することで,乱流流入ジェットの大規模構造の特定,ノズル出口付近の乱流の微細構造から発生する音響波に着目して進めたい. 平成28年度には,25,26年度に用意した実験システムおよび数値解析コードを用いて3)衝撃波乱流干渉から発生する音響波を解析する.大規模データが取得できるためデータストレージ等を用意する.また前年度同様流体現象の理解を行うためにデータマイニングを利用する.また28年度後半にこれまでの成果をまとめ,2dB以内の精度で数値解析をおこなうためにどのような物理現象を解像すべきかを示したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初申請よりも大幅に減額されたため,来年度以降の旅費,消耗品に当てるため基金分を残している.
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次年度使用額の使用計画 |
来年度以降の旅費や消耗品に当てたい.
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