研究課題/領域番号 |
25709011
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
井上 修平 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60379899)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / エネルギー / 熱工学 |
研究概要 |
レアアースを用いないマグネシウムと亜鉛の酸化物からなる半導体ナノ粒子が特異な蓄電性を示すことが初めて報告されておりこの粒子は紫外線照射に誘起されるフォトクロミズムにより蓄電性を発現し、金属の密度で電子を蓄電することが確認された。これは10 cm角の基板に25 um堆積させると単三電池に相当する蓄電量である。しかし蓄電メカニズムに関しては不明であり熱緩和による可逆的な蓄電性の消失の原因も分かっていない。 これまでの研究から基板上に堆積した粒子は10 nmから数100 nmの大きさであり、気相中ではなく基板上でも凝集による成長したものなど雑多な集合体となっている。このためCVD合成された酸化物半導体膜は局所的にしか蓄電機能を発現しない。CVDによる装置内の熱流体的な不均一場によりたまたま最適な条件下で合成されたものが機能を発現しているのが現状である。以上の理由からナノ粒子のサイズ選別・組成選別を行い蓄電性を発現する要因を明らかにすることが大切となってくる。 これらの状況を踏まえ本研究では粒子を大きさごとに分別し細かく分析することが重要であると考え初年度では微分型微粒子分級装置(DMA)を開発しナノ粒子のサイズ選別を行い、基板上に堆積させる。本実験では堆積させる基板はプラズマ直下ではないため室温、またはペルチェにより冷却が可能で基板上でのマイグレーションを防ぐことができる。サイズ選別に関しては、10 -160 nmのナノ粒子を中心に分級できる装置の開発を目的として研究を進めた。装置の開発は完了しており計画通り進んでいる。しかし本研究で対象とする圧力が既往の研究で報告されている圧力に比べてかなり低いことから電圧の大きさと実際に分級される粒子の大きさの対応を取る必要がでてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要な装置である微分型微粒子分級装置(DMA)の開発は完了しており今後は計画書の予定通りナノ粒子の分級とフォトクロミズムの対応を確認していくことになる。DMAによる微粒子分級はこれまでに多くの先行研究が有る既存の技術であるが、本研究で対象とする圧力が既往の報告例に比べてかなり低いためパラメータが一致しない可能性がある。具体的には、微粒子は粘性流体中の移動度と電場により引きつけられる力とのベクトル和の方向に進むためこれらを調節することにより対象の粒径のものをサンプリングすることができる。粘性流体が基本であるが希薄気体への遷移領域でも適応できるよう補正係数を相関式中に導入している。まずこの相関式がどの程度本研究での対象圧力下で機能するのかを確認する必要がでてきた。これにはおよそ3ヶ月程度必要になると考えている。これだけでは当初の予定に比べて若干の遅れとなるが、反対に当初2年目以降に予定していたナノ粒子合成装置の開発が予定より前倒しで進んでいることから全体的に見ておおむね予定通りであると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
計画当初は研究協力者のプラズマCVD装置の簡易版を開発する予定であったが、1. 内部のプラズマが同等とは限らない。2. 再現性が悪い。3. レーザーアブレーションでもフォトクロミズムを発現する粒子を合成できることが分かった。4. 充足率が低くプラズマ装置の開発が難しい。5. どうしてもプラズマCVDでの実験が必要であれば研究協力者のところにDMAを持って行き実験できる。以上の理由からナノ粒子の合成をレーザーによる合成に変更することにした。これは否定的な変更ではなく、レーザーによる合成で再現性良く、同等の研究が行えることが共同研究から新たに得た知見で有り、前向きな変更であるととらえている。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度に助成金分の一部を前倒し申請した分の一部が残る形となったが、物品の購入費が若干安価になったためである。 消耗品類として使用する。
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