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2014 年度 実績報告書

ナノ界面の電子状態制御による熱エネルギー伝達機構の分子論的解析

研究課題

研究課題/領域番号 25709012
研究機関九州大学

研究代表者

石元 孝佳  九州大学, 稲盛フロンティア研究センター, 特任助教 (50543435)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワードナノ界面 / 電子状態 / 濡れ性 / カーボン / エネルギー伝達 / 水素結合
研究実績の概要

ナノスケールで初めて発現する界面特有の濡れ性は電子物性変化に由来するため、電子状態理論に立脚したアプローチが必要である。本研究ではナノ界面に対する濡れ性と熱エネルギー伝達機構を分子レベルで解明するために、平成26年度は以下の3点について取り組んだ。
A. 新規計算手法の開発に向けて、本研究ではnon-BO量子論に基づく計算プログラムの開発に取り組んだ。計算プログラムとして量子化学計算用GAMESSを取り上げ、non-BO量子論を実装した。また外場の影響を考慮可能とするためのプログラムの開発にも取り組んだ。さらに開発したプログラムの並列計算を可能とするためにGAMESSの並列化計算部分に関係するDDIの一部の改良を行った。新規計算手法実装前のGAMESSと比較すると開発プログラムは同程度の並列化効率が得られていることを確認した。
し、実用的な計算に向けた並列化処理を行った
B. グラフェン上での水の安定構造や配向に関する基礎的な知見を得るために基本的な芳香族化合物に対する超高分解能レーザー分光測定を行った。分子科学研究所にてベンゼンについて超音速ジェットと波長可変パルスレーザーを用いた高分解能スペクトルを測定した。今回の測定でベンゼンの分子構造を精密に測定することができた。
C. 本研究で取り扱うナノ液滴構造を構築するために、1,2,3,5nmサイズの水滴構造をモデリングした。グラフェンモデル構造と水分子の相互作用構造の詳細を理解するために、水クラスターの構造と相互作用エネルギーについて解析した。濡れ性へ与える影響が分子スケールで解析可能となり、水分子の増加とともにグラフェン-水と水分子間の相互作用強度が変化していった。また外場として電場の影響を考慮し濡れ性に与える影響について解析した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ナノ界面に対する濡れ性と熱エネルギー伝達機構を分子レベルで解明するために、本研究では、A. non-BOダイナミクス手法の開発、B. ナノ界面実構造の高精度測定、C. ナノ界面の電子状態解析、の課題に取り組んでいる。平成26年度、Aについては計算プログラムの若干の修正は必要なものの大規模計算に向けた実装に成功した。外場の影響を考慮した計算手法の開発も順調に進んでおり、プログラムの開発スピードをさらに加速させていきたい。Bについてはベンゼンについての測定に成功した。ベンゼンと水分子の詳細な実験データを測定することで、界面構造のモデリングに役立てていく。Cについてはナノ液滴の構造的特徴を抽出することに成功し、当初の予想よりも進捗が見られた。外場の影響が濡れ性に与える影響についても予備的なデータを取得することが出来た。
以上の観点から総合的にみると、研究はおおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

今後の研究の推進方策として具体的なアプローチを以下に示す。
A.平成26年度に取り組んだCの応用計算の段階で、大規模non-BO量子論を実装した計算プログラムにおいて水のナノ液滴のサイズを大きくしていくと計算が収束しないという問題が見つかった。本格的な応用計算のためには解決しなければならない本質的な問題であるため、本年度は開発プログラムの改良と大規模計算の検証を重点的に行う。その後、当初の予定通り外場の影響を考慮できるようにプログラムの拡張を行う。また、現在のプログラムではラジカルや種々のイオン種の計算に制約があるため、非制限系の電子状態理論の実装に取り組む。
B.ベンゼン-水やナフタレン-水といった芳香族化合物と水の相互作用構造に関して超高分解能レーザー分光測定を用いて解析する。ベンゼンやナフタレンといった芳香族化合物の場合と異なり、芳香族と水の複合体はスペクトルの測定、解析に時間を要するため、本年は実験の頻度をあげて問題の解決に取り組む。この解析を通して水の同位体(H2O,D2O,HDO)とベンゼンの回転定数を決定し、計算結果と比較することでより現実的な界面構造の決定に取り組む。
C.本年度は開発した電場を考慮した大規模計算プログラムを活用し、電場を印加した際の水クラスターのグラフェン界面での安定性について重点的に解析する。また、イオン性化学種(H+やOH-など)共存下でのプロトン移動と分子振動の協奏的エネルギー伝達機構の特徴を抽出する。最終年度に向けて開発手法を用いた実在スケールでの電子状態計算の予備データの蓄積とグラフェンにナノ液滴を配置した大規模計算用モデリングを行う。

次年度使用額が生じた理由

本年度の未使用額については当初、購入計算機サーバーの増強を想定していた。しかしながら、十分な処理能力を有する計算機システムを購入できたことと、次年度にプログラム開発の人件費として利用することでより効率的なプログラム開発、応用計算への取り組みが可能であると判断したため次年度使用額として繰り越すことを決めた。次年度使用額が生じることによる研究の進展への影響はなく、むしろこれにより研究の進捗が加速されることが期待される。

次年度使用額の使用計画

次年度使用額となった分については、プログラム開発および応用計算に向けたアルバイト学生などへの謝金のために利用する。またプログラム開発の意見交換のための旅費としても活用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Theoretical Study on Wettability of Graphene/Water Interface2015

    • 著者名/発表者名
      Takayoshi Ishimoto
    • 雑誌名

      AIP Conference Proceedings

      巻: 1702 ページ: 090052

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.6063/1.4938860

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Theoretical Study on Interaction Energy between Water and Graphene Model Compounds2014

    • 著者名/発表者名
      Takayoshi Ishimoto and Michihisa Koyama
    • 雑誌名

      Journal of Computer Chemistry, Japan

      巻: 13 ページ: 171-172

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Theoretical Study on Wettability of Graphene/Water Interface2015

    • 著者名/発表者名
      Takayoshi Ishimoto
    • 学会等名
      International Conference of Computational Methods in Science and Engineering (ICCMSE2015)
    • 発表場所
      Athens, Greece
    • 年月日
      2015-03-20 – 2015-03-23
    • 招待講演
  • [学会発表] Theoretical Study on interaction Energy at Graphene/Water Interface2014

    • 著者名/発表者名
      Takayoshi Ishimoto and Michihisa Koyama
    • 学会等名
      10th Congress of the World Association of Theoretical and Computational Chemists
    • 発表場所
      Santiago, Chile
    • 年月日
      2014-10-05 – 2014-10-10
  • [学会発表] グラフェン/水界面の電子状態と濡れ性に関する理論解析2014

    • 著者名/発表者名
      石元孝佳、古山通久
    • 学会等名
      第8回分子科学討論会
    • 発表場所
      広島
    • 年月日
      2014-09-21 – 2014-09-24
  • [学会発表] グラフェン/水界面相互作用に関する理論解析2014

    • 著者名/発表者名
      石元孝佳、古山通久
    • 学会等名
      日本コンピュータ化学会2014春季年会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2014-05-29 – 2014-05-30

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公開日: 2016-06-01  

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