研究課題/領域番号 |
25709017
|
研究種目 |
若手研究(A)
|
研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
真下 智昭 豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合研究所, テニュアトラック助教 (20600654)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 圧電アクチュエータ / マイクロモータ / 超音波モータ |
研究概要 |
マイクロ圧電アクチュエータである,球面モータ,回転直動モータ,超音波ポンプらの高出力化の設計指針を得るために,有限要素法を用いてステータの振動解析を行い,その結果に基づいてステータの設計開発を行った.またステータとロータの接触状態(クリアランス,表面粗さ)はモータの性能に影響する.そこで,ロータの研磨加工を用いてサブミクロンオーダーでそのクリアランスを制御しモータ性能への影響を調査した.クリアランスは1ミクロン程度である時に出力が最大となることが実験で明らかになった.また,表面粗さは加工のしやすさで決まり,材料をSUSに変えることで表面粗さを小さくし,局所的な摩擦を低減することが可能になり,安定したロータの回転を実現できた. これらの研究開発に基づいて,1ミリ立方メートルのステータを試作し,全体で約1mmのマイクロ超音波モータを開発し,目標トルクであった1μNmを達成した.これは見方にもよるが,実用的なトルクが得られるモータとして世界最小のサイズである.出力向上を目的として,ステータとロータ間の与圧を自由に調整できる実験装置を開発し,与圧を変えた場合の出力特性を明らかにした.ステータ形状は,ステータが効率よく振動を大きくできること重要であり,ステータの穴の大きさを変えた場合におけるステータの振動振幅やインピーダンス特性などの調査し,ステータ設計の最適化を行った. また,二自由度の回転運動を実現するマイクロリンク機構を実現するために,2個のステータを用いて1個の球を直接に回転する方式の2自由度球面モータを考案し,試作を行い,駆動実験を行ったところ,直径4mmの球を概ね予想した方向に回転することができ,その実現可能性を示すことができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画に沿って,マイクロ超音波モータの電気的入力を与えた場合に生み出される機械的出力を計算できるようにする出力モデルを構築した.ステータを約3mm角の大きさで試作し実験を行い,モデルと比較して,形状や材質を最適化する設計手法を検証した. 当初の計画に加え,さらに,1mm角のステータを用いたマイクロ超音波モータの開発を行うことが出来ている.このモータの試作および実験を行い,1μNmのトルクが得られているが,これは小型カメラなどの小さいものを駆動するだけであれば十分に実用的なトルクである.先行研究のマイクロモータにはφ0.3mm長さ1mmの金属振動子を用いたものがあるが,圧電素子と与圧機構を含めると全体としては数mmにもなる.開発したマイクロ超音波モータのサイズは1ミリ立方メートルであり,実用的な出力が得られるモータユニットとしては世界最小である. 小型カメラの方向を自由に操作できるようにすることを目的として,二自由度の回転運動を実現する多自由度モータの開発を行った.当初マイクロリンク機構の試作を試みたが,その結果全体として大きくなり,十分な駆動力が得られなかったことから,2個のステータを用いて1個の球を直接に回転する方式の2自由度球面モータを考案した.3mm角,厚さ1mmの直方体形のステータを試作を行い,直径4mmの球ロータを用いて,駆動実験を行ったところ概ね予想した回転方向に回すことができている. 回転直動モータの開発では,2mm角のステータを用いて,ロータシャフトには生検針の模擬として直径1.5mmの軸を選定し,その駆動実験を行った.接触状態を改善することにより,過去に試作した3.5ミリ角のステータと同様の出力である数mNの力を生じることができている.
|
今後の研究の推進方策 |
開発した1ミリ立方メートルのステータを用いたマイクロ超音波モータの性能向上に関する研究開発をさらにすすめる.このサイズでは,表面粗さやばりなどの機械加工の影響が大きくなるため,機械力学をベースとしたマイクロ超音波モータモデルを開発し,モータの駆動実験を行い,実験結果との検証を行う.これまでの実験で,高トルク化,回転の安定化のためには,与圧をうまくコントロールすることが重要であることが分かっているが,現在の与圧を与える装置の構成は数mmとまだ大きい.そこで,与圧を適切に調整することのできるロータの実験開発を行う.また,トルク向上のためにステータを複数個用いたマイクロモータやマイクロ減速機構を開発して駆動実験を行い性能評価を行う. 球面モータの開発においては,3mm角,厚さ1mmの平板型ステータを用いて球を自由に回転する球面モータを考案し試作を始めているがカメラを駆動するためのトルクはまだ十分でない.まず1個のステータと1個の球の関係での性能を明らかにし,トルクを大きくする与圧機構の設計を行う.次にステータ2個を与圧機構で保持する球面モータを試作し,駆動実験を行う.球とステータの接触をモデル化し,自由に出力トルクを決定できるよう駆動力発生メカニズムをモデル化し,回転方向と位置決め制御を行うことが出来るようにする. マイクロポンプ開発では,ステータから生み出される流れを,解析でシミュレーションし,ポンプの形状を設計する.CFD解析の計算時間は周波数に比例して増加するため,超音波領域の計算は現実的でない.そこで実験結果に基づいて,簡易に流量と周波数の関係を計算できる等価モデルを開発して計算速度の高速化を図り,ポンプを最適設計できるようにする.超音波振動によって微量流体の粘性が下がる効果も調べ,モデルにも取り込む.
|
次年度の研究費の使用計画 |
科研費での参加を予定していた国際会議(IUS2013,チェコ・プラハ)の日程が,他の経費で参加を予定していた国際会議の直後の開催となり,併せて一回の出張で済ますことができるようになり,旅費を大幅に削減できた.また,マイクロスコープを予定していた専用装置ではなく,デジタルカメラなどの汎用的な機器を用いて開発することで高性能かつ低コストで製作することができた. 1ミリ立方メートルのマイクロ超音波モータの開発をさらにすすめるために研究費を使用する.新しいステータを試作するために約20万円,ロータを試作するために約30万円,回転数を精度良く測定するためのロータリーエンコーダを購入するために約8万円必要である.
|