研究実績の概要 |
平成28年度は,これまで個別に改変していた微小管の表面電荷密度と曲げ剛性を同時に改変することで,分子分離を微小流体デバイス内で実証したことが最大の成果である.曲げ剛性を測定した7種類の微小管から,最も剛性の低いGTP存在下で重合した微小管の先端にさらにDNAを付加することで,電界中での運動時の曲率を大きくした.一方,最も剛性の高い微小管としてGMPCPP存在下で重合した微小管を選択した.この最も曲がりやすい微小管と,最も曲がりにくい微小管の電界中での運動曲率を計測し,それに対応した微小流体デバイスの再設計をおこなった.これによって,表面電荷密度と曲げ剛性を単独で改変した場合に比べ,分子分離システムにおける分離効率を最大で9割まで改善することができた.キネシン修飾基板上における微小管の運動方向を決める要素と考えられている2つのパラメータを改変することによって,自律的な運動方向の制御を実証することができた. また,微小管の曲げ剛性の測定において,微小管の蛍光像からの位置決定精度を1 nm, 10nm, 100 nmと変えて検討をおこなった.すると,曲げ剛性が高い場合,および微小管が短い場合においてその測定誤差が非常に大きくなることを見出した.既報では,位置決定精度が様々であり,このことが微小管の曲げ剛性(持続長)の報告値の違いに現れていると考えられる.今後,高い位置決定精度で様々な微小管の曲げ剛性を測定し,微小管結合タンパク質や伸張速度の違いによる曲げ剛性の影響を再定義したい.
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