研究課題/領域番号 |
25709020
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
居村 岳広 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (30596193)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ワイヤレス電力伝送 / 磁界共振結合 / 磁界共鳴 / 電界共鳴 / 電磁誘導 / ユビキタスエネルギー / 非接触電力伝送 / センサ |
研究概要 |
本研究は『磁界共鳴によるユビキタスエネルギー社会の実現に向けた研究』と題し,磁界共鳴によるワイヤレス給電の包括的な研究を4ヶ年かけて行なうことである。 今後の社会の発展とワイヤレス給電の発展を考えると,いつでもどこでも電力の融通が出来るユビキタスエネルギー社会が到来することは必然である。ユビキタスエネルギー社会では,いつでもどこでも情報のやりとりができるユビキタス社会同様に,エネルギーをいつでもどこでもワイヤレスで享受できる社会である。このユビキタスエネルギー社会では,ワイヤレス給電の適応先は,送電・受電・中継コイルが入り交じった,多対多(以下,N対N)の磁界共鳴型ワイヤレス給電システムになっていく。しかしながら,N対N給電システムに適応できる理論の不足が否めない。そこで、初年度となる平成25年度は、N対N給電システムの総合効率高効率化理論の確立を目指した。磁界共鳴のコイルは,ある特定の条件を満たすと,1対1より,1対Nもしくは,N対Nの方が総合効率を向上させる事ができるという現象について研究を行い,その現象の特定を行った上で,定式化を行い,最適化理論の構築に成功した。これにより、複数給電は,1対1に比べても,よりこのワイヤレス給電システムに適していることを明らかにできた。更に、複数給電が行われる領域で多発するクロスカップリングについては、効率低下の原因とされており、問題視されてきたが、現象の把握に始まり、その抑制法についての一つの道筋を示すことが出来た。このテーマは非常に重要なため、平成26年度には完成させる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
先にも述べたが、本研究は『磁界共鳴によるユビキタスエネルギー社会の実現に向けた研究』であり、かつ、N対N給電システムの実現が主要な目的である。初年度は、複数給電システム自体の意義があることについて実証することが出来た。複数負荷への給電は中継コイルを利用する方法もあり、直線上のコイルを利用して複数給電を行うと効率が低下する現象もあり、複数給電自体へのネガティブな声も聞こえた。しかしながら、本成果によって、複数給電システムは、ネガティブどころか、総合効率を容易に上げることができ、よりワイヤレス給電に適したシステムであることを示すことが出来た。1対1に対する優位性を示すことが出来たのは、今後、このユビキタスエネルギー社会実現のためには大きな一歩となった。更に、コイルを複数利用し、配置と位相を調整することにより、漏洩電磁波を抑制できる条件があることを示せた。この磁界共鳴を実用化まで持って行く際に、一番のハードルとなるのは,最終的には漏洩電磁波であることが指摘されている。条件付きとはいえ、早い段階で、漏洩電磁波抑制法の一方法を提示できた事には大きな意義がある。更に、従来のワイヤレス電力伝送においては、負荷変動やエアギャップのリアルタイムの変動が少ないことから重要視されてこなかったリアルタイムにおけるロバストなシステム構築が必要とされていた。本年度は、安定した電力を送るための基礎実験まで行うことが出来た。提案のシステムは、非常にロバストなシステムであり、10msec以下で変動に追従することが可能である。今後は、この技術の確立と、複数給電への適応を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
複数給電システムを実用レベルまでもっていくには、包括的な研究が必要なのは先述のとおりである。そのためには、4年かけて、一つ一つの技術を丁寧に完成させ、最後に融合させる方法が最善の策である。平成26年からは,下記、1)~4)の研究に注力する。 1)N対N給電システム共振器理論ベースの設計論の構築:N対Nの場合,通常の行列計算では効率の最適だけをとってみても,膨大な計算が必要となり,効率の安定化までは数秒から数分かかってしまい,動的な受電デバイスが複数あった場合は安定供給が困難になることが予想される。本研究室では,共振器理論をベースに電力分配比を算出するなどの理論拡張をしており,高速計算のための設計法や新しいアルゴリズムを創造する。 2)N対N大規模給電システムの協調制御:一方,個々のコイルに関してはインピーダンス最適化理論により,高効率化は実現可能なので,多入出力システムかつ狭帯域のコイルに関して,協調制御を行える高速安定化制御技術の創出を行う。1)と2)は同じ目的を持っているが,共振器理論の拡張と,磁界共鳴における大規模入出力制御方式の確立という違ったアプローチによって,2つの大きな学術的方向性を示したい。 3)N対Nの様に受電コイルの個数が増えると、受電コイル間でクロスカップリングが生じる。このクロスカップリングは、電力伝送効率や、共振周波数に大きな影響を及ぼす。そこで、このクロスカップリングを抑制する技術が必要となる。前年度から進めているが、本年度は、その技術の完成を目指す。 4)磁界共振結合によるワイヤレス電力伝送は、大きなエアギャップを達成できるということで、大きな注目を浴びた。しかしながら、実用を考えると、これまでに報告されたエアギャップでは、ユビキタスエネルギー社会を支える技術としては不十分である。そこで、kとQの特性を利用して、さらなるエアギャップ拡大を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、コイルを大量に作る予定があったため、申請者がコントロールできる範囲で、予算を次年度に繰り越すことにした。簡易試作や設計時にはそれほど費用がかからなかったので、来年度にまわすことをよしとした。 年度の早い時期にコイルの試作を行い、完成品を年度の後半までには作成する。コイルは大量に必要とは述べたが、一つ一つの形状を変えて最適化を行う過程において、大量のコイルが必要であるため、一度に大量に制作することはしないため、完成品は後半までかかることになる。
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