最終年度は、下記2項目に力点を置いて研究を実施した。 【不純物添加がSi量子ドット多重集積構造のEL特性に及ぼす影響】 昨年度までに、n-Si(100)基板上に形成した極薄Au電極を有する高密度Si量子ドット多重集積発光ダイオード構造において、基板から電子、電極から正孔を同時注入することで、室温で量子準位間遷移に対応する近赤外領域のエレクトロルミネッセンス(EL)が認められ、さらには、Si量子ドットへの不純物添加がEL強度の増大に有効であることを明らかにしてきた。また、P添加ドット(基板側)とB添加ドット(上部電極側)を積層したP/N制御Si量子ドット構造において、キャリア注入効率の向上に起因して発光強度が顕著に増大することも明らかにした。本年度は、P/N制御Si量子ドット多重集積構造からの室温EL特性を真性Si量子ドットあるいは不純物添加Si量子ドット多重集積構造と比較することで、Si量子ドットの価電子制御が発光効率に及ぼす影響を評価し、P/N制御Si量子ドットにおいては電子及び正孔の注入効率向上に起因して、発光効率が~0.15% 改善することを明らかにした。 【外部磁場が高密度FePtナノドットスタック構造の電子輸送特性に及ぼす影響】 熱酸化SiO2薄膜上に形成した極薄Pt/Fe積層膜をリモートH2プラズマ(H2-RP)処理(外部非加熱)することで、L10規則合金FePtナノドットを高密度一括形成でき、磁性AFM探針を用いてFePt合金ドットの局所電気伝導特性を評価した結果、FePtナノドットの磁化特性を反映した電子輸送変化が室温で観測できることを明らかにしてきた。本年度は、異なるサイズのFePtナノドット二層構造において、外部磁場印加方向が局所電気伝導特性に及ぼす影響を評価し、ナノドットの保磁力差を反映して、ドットの磁化状態に起因する電子輸送変化が室温で観測できた。
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