研究課題/領域番号 |
25709026
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
西山 伸彦 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (80447531)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 半導体レーザ / InP / トランジスタレーザ / フォトニックネットワーク |
研究概要 |
平成25年度は、トランジスタレーザの静特性の向上、特に電流増幅率を維持しながらしきい値電流と効率を改善させることに注力した。前年度までの研究においてベース層構造の調整により同じ電流増幅率であっても内部量子効率が大きく変化することを明らかにしており、実際の作製・測定によってその関係を明確化した。 従来のp-GaInAsPベース層のバンドギャップ1.06eV, 厚み200nmに対し、バンドギャップ1.19eV, 厚み100nmの素子を作製し、測定を行ったところ、ベース接地動作において、従来39mAであったしきい値電流を26mAに、従来13%であった外部微分量子効率を20%に改善することができ、電流増幅率は従来と同じ0.02であった。つまり、電流増幅率は維持したまま、しきい値電流を改善することができた。この理由としてバンドギャップの拡大により量子井戸からのキャリアの漏れを減少し、同時にベース層厚の薄膜化により、発光に寄与しない不要なキャリアの再結合を抑制することができたことにあると考えている。今後は、発光特性を維持しつつ電流増幅率を向上することに注力する。 また、熱抵抗と電流増幅率がどのようにI-L特性に影響を与えるかについての数値計算を行いこれまで作製した素子に比べ大きく熱抵抗を下げなければ、電流増幅率が高い場合に良好な発振ができないことを明らかにし、来年度以降の課題を明確にした。今後は、サブマウントボンディングなどをしたうえで、特性を測定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、数値計算と実験を組み合わせ、ベース層構造の関係を明確化することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる平成26年度は、主に目標「トランジスタレーザ動作電流の低減と高出力化」に注力する。前年度までに達成する予定であるベース領域の層構造を利用し、ウェハ構造全体のドーピング濃度の調整などを行っていく。トランジスタレーザ構造は、電気特性の確保のため比較的高濃度のベースドーピング量を必要とする。一方で、クラッド層は、両側がn型層のためドーピング量を低く抑えることができ、光吸収も減らすことが可能であるため、全体として補償できる。その最適化を行い、デバイス全体での内部損失を10cm-1程度まで抑えることを目標とする(従来のレーザダイオードでは申請者のグループ作製で、6~7cm-1程度)。これを達成できれば、動作電流の低減と高出力化が可能になる。一方で、作製したデバイスでの各動作状態での光学特性の詳細な観測も行う。各コレクタ電圧、各ベース電流での発振スペクトルの変化、相対強度雑音の変化などを観測する。コレクタ電圧によるバンド構造の変化は、量子井戸まで影響を与えないと予想しているが、発振スペクトルの変化より、実際にそれを観測し確認する。また、相対強度雑音観測を通して光緩和振動周波数における雑音ピークの変化を観測することにより、実際の変調実験を行わなくともある程度のダンピング特性の知見を得ることができるため、次年度の変調実験に向け事前準備として行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
作製回数の減少で作製に使用する消耗品(薬品等の材料費)が予定より少なかったため。 来年度は作製効率が向上し、フィードバックの回数が増えるため、消耗品額が増加することが予想されるため、それに充当する。
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