研究課題/領域番号 |
25709026
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
西山 伸彦 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (80447531)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 半導体レーザ / InP / トランジスタレーザ / フォトニックネットワーク |
研究実績の概要 |
平成26年度は、トランジスタレーザの静特性の向上、特に電流増幅率を維持しながらしきい値電流と効率を改善することに注力すると共に、トランジスタレーザの熱抵抗低減、トランジスタレーザ特有の動作である電圧変調による直接変調動作の実現とその評価を行った。 電流増幅率の向上に関しては、ベース層の薄膜化を行うとともに、それに伴って発生した層の断裂による電流遮断の問題を、クリーニングプロセス等の加工プロセスの改善によって解決し、実際電流増幅率0.14と従来に比べて7倍の値を達成しながら室温連続発振動作を実現した。 トランジスタレーザの熱抵抗低減に関しては、ベース電極構造へのPt層導入とアニール処理及びコンタクト層膜厚変更を行うことで、従来の電極構造と比較し固有接触抵抗において2桁程度の低減が可能であることをTLM測定から示した。また、上部電極へのめっき処理及び下部電極の金属ボンディングを行うことで、それぞれ-22%と-31%の熱抵抗低減効果が得られることを示した。 トランジスタレーザの電圧変調特性の評価に関して、ベース接地においてコレクタ-ベース間電圧VCBに変調信号を印加し、7 GHzの入力信号まで光出力の応答が得られることを示した。しかし、得られた波形はパルス状であり、疑似ランダム信号入力時のアイ開口は確認できなかった。この原因として、VCB印加時に通常よりも大きな反転分布が共振器内に形成され、VCB減少と共にこれらのキャリアが一斉に光として放出されることでパルス状の波形が形成される可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の7倍となる電流増幅率0.14を達成しながら室温連続発振を実現することができた。また、電圧変調を実際に観測し、新たな知見を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
26年度までに達成した電流増幅率0.14を超える増幅率達成のため、引き続きAlGaInAs活性層における再成長条件の検討と共に、成長回数を低減するための、構造・加工プロセスの変更を行う。同時に、熱抵抗を低減することが電流増幅率が増加した際の発振動作に必須であるとの知見をこれまでに得ており、放熱構造の検討も行う。 また、26年度観測した、コレクタ電圧を変調した場合に、連続動作時に観測される光出力を大幅に超える信号が発生することによる大信号生成について、理論的な考察を進めるとともに、複数のデバイスなどでも観測をすすめ、新たな信号変調方式の検討に繋げていく。 エミッタ電流変調においては、電流増幅率を増加させたデバイスが実現されれば、作製したデバイスでの各動作状態での光学特性の詳細な観測も行う。各コレクタ電圧、各ベース電流での発振スペクトルの変化、相対強度雑音の変化などを観測する。相対強度雑音観測を通して光緩和振動周波数における雑音ピークの変化を観測することにより、実際の変調実験を行わなくともある程度ダンピング特性の知見を得ることができるため、「変調特性の測定を通した低ダンピング正の実証・高速動作限界性能の明確化」を達成する。その際に本研究において本質的ではない寄生容量によって高速動作が制限される可能性があるが、20GHz以下の領域における小信号応答の変化によりダンピング特性を求め、限界速度をフィッティングにより求めていく。 最後に、電界吸収変調器集積型レーザダイオードも含め、実際のデバイスにおける消費電力・速度などの性能指数の比較を行い、通信網への適応可能性を議論する。
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次年度使用額が生じた理由 |
デバイス作製にかかる物品費について、作製量などの関係で、少量の使用になった部分があるため。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度も引き続きデバイスの作製を行うが、26年度の結果を受けて、変調用のワイヤーボンディングを容易にするためフォトマスクを再設計する必要が出てきたため、これに利用することを計画している。
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