研究実績の概要 |
H27年度は,運動学データのみならず動力学的データも併せて計測し,提案する制御則と再現された歩容および歩容遷移に内在する力学構造について解析することを通して,歩容発現機序の体系的理解を試みた.
具体的には,(1) さまざまな初期に対する歩容の収束性,(2)リターンマップに基づくポテンシャル関数を用いた安定性解析,(3)歩容遷移の再現性およびヒステリシス,について解析を行った.(1)の結果,ωの大きさに応じて,walk, trot, half-bound, canter, gallopへと歩容が収束していることが確認された.さらに,trotとhalf-boundの2つの歩容の中間の速度領域においては,2つの収束する歩容を有する双安定なパラメータが存在することが確認された.(2)では,(1)のデータに基づき各歩容に対する安定性解析として,リターンマップを用いた解析を行った.さらに,得られたリターンマップの近似曲線から,収束する歩容近傍のポテンシャル関数を導出した.得られたポテンシャル関数の構造から,上記の2つの収束する歩容が存在するパラメータ(ω)ではポテンシャル構造が2峰性であることが明らかとなった.(3)では,ωの変化パターンに応じた歩容遷移実験の特性を検証した.具体的には,ωの増加および減少の条件での歩容遷移について検証した.その結果,ωの変化の方向(増加あるいは減少)によってヒステリシスに相当する現象が確認された.このヒステリシス現象の発現の背後には,(2)で得られたポテンシャル構造の変容に基づく力学構造に応じた歩容遷移が発現していることが確認された.
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