研究課題/領域番号 |
25709034
|
研究種目 |
若手研究(A)
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
酒井 雄也 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (40624531)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | コンクリート / 物質移動 / 体積変化 / 空隙構造 / マイクロテクノロジー |
研究概要 |
コンクリート中の微小空隙における各種物質移動やそれに起因する体積変化の機構の根本的な解明を目的として検討を進めている。 まずコンクリート内部の微小空隙を模擬したマイクロ/ナノオーダーの流路作製に関しては、当初の計画ではマイクロ/ナノオーダーのサイズの流路を有するガラス基板を用いて収縮機構の検討を行う予定であったが、コンクリートとガラスでは接触した際に生じる結合や結合に必要なエネルギーが異なるため、まずコンクリートの空隙壁面と同様の性状を有する流路の作製を試みた。流路の作製方法として、表面に空隙のないセメントペーストを作製し、そこに溝を掘り、ガラスと張り合わせるという方法を試みた。低水セメント比のセメントペーストを打設直後から高圧環境で養生することで、流路作製位置に空隙のないセメントペーストが作製できることを、原子間力顕微鏡で確認した。流路切削は微細加工装置により行った。ガラスとセメント硬化体の接着は、両者を接触した状態で水中に浸漬し、界面に水酸化カルシウムを析出させた後にオートクレーブ処理することで行った。 コンクリート中の物質移動に関しては、閾細孔径という空隙指標に着目し、水銀圧入ポロシメトリーにおいて臨界浸透確率に基づいて閾細孔径を抽出する手法を開発した。抽出した閾細孔径は、各種物質移動と高い相関および定量的な対応を示した。よって、コンクリート中の物質移動に関しては現象を支配する空隙指標である閾細孔径の抽出と、閾細孔径に基づく物質移動の定量評価を達成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は大きく分けて、マイクロ/ナノオーダーの流路を有する模擬コンクリートの開発、模擬コンクリートを用いた観察・測定手法の確立および上記手法の活用による現象機構の解明という3つのパートから構成される。マイクロオーダーの流路を有する模擬コンクリート、すなわちコンクリートの空隙壁面と同様の性状を有する流路の作製は既に達成している。ナノオーダーの流路に関しては、集束イオンビームを用いた加工を既に試し、有効であることを確認している。また物質移動に関しては、模擬コンクリートを用いて支配的な空隙指標の抽出を試みる予定であったが、臨界浸透確率という概念に基づいて抽出された閾細孔径が各種物質移動と高い相関および定量的な対応を示した。よって、コンクリート中の物質移動に関しては現象を支配する空隙指標である閾細孔径の抽出と、閾細孔径に基づく物質移動の定量評価はすでに十分に達成できたと考えている。計画の目的として残っているのは、水分移動に起因する変形機構に関する検討のみであり、残り1年で十分に達成可能であると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は水分移動に起因する体積変化機構を検討する。セメントペーストとガラスの接着方法を検討する段階で、硬化したセメントペーストやコンクリートは、粉砕しても圧縮成形することで再び一体化して強度を発現することを確認したが、この成形体を用いて機構の検討を進める予定である。具体的には、コンクリートの水分移動による体積変化は毛管負圧、分離圧、表面エネルギー変化などが原因であると言われているが、様々な粉体を成形して多孔質体を作製し、水分移動によるその体積変化を検討することで、上記要因の妥当性を個別に検討することが可能である。またメニスカスを生じさせずに乾燥を行う超臨界乾燥なども取り入れ、体積変化機構の要因を分解して、根本的な機構整理・解明を行う予定である。
|