研究課題/領域番号 |
25709042
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
入江 政安 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00379116)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 4次元変分法 / データ同化 / 海洋レーダ / 沿岸域の流動 / 沿岸域の環境 / 流動水質モデル |
研究概要 |
本年度においては,密度差の大きい沿岸域における4次元変分法を用いたデータ同化における課題を抽出した.海洋レーダによって得られた表面流速データを用いた同化は,観測データを直接的に同化する簡易的なナッジング法に比べて大きな同化効果が認められ,観測範囲外においても同化の効果が得られるなど良好な結果を得た.特に河川からの淡水の影響範囲を適正に予測することに効果を発揮するものと考えられる. 流速の鉛直データを用いた4次元変分データ同化は,これまで比較的密度差の小さい外洋で多く行われてきた.本研究では沿岸域の密度差の大きい海域での適用を試みた.対象としたのは大阪湾において得られる水質定点自動観測データで,複数点における流速の鉛直データ(つまり流速の3次元データ)を4次元変分法を用いて同化した.流速の空間分布の再現性が大幅に向上するとともに,水温・塩分の空間分布再現にも良好な効果をもたらすことを示した.しかし,わずか数kmで躍層水深が異なるこのような海域では,水平方向および鉛直方向誤差相関距離の設定など,検討が必要な項目も多く,より適切なデータ同化にはさらなる検討が必要である. 本検討により,例えば,今回設定している西側境界の境界条件の設定が再現性に影響を与えていることが示唆されるなど,4次元変分データ同化を用いることによって,シミュレーション本体の個別課題を分離抽出できることも明らかになった. 本年度においてはまだ成果公表には至っていないものの,流速・水温・塩分のデータ同化を行い,これについても大いに再現性の向上が得られており,また,水質シミュレーションを同時に実施した場合,水質項目の再現性を向上させることも明らかにした.追って成果発表する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的と完全には一致してはいないものの,概ね順調に推移している.すでに査読済み論文が採択されており,国際会議での成果発表を行う予定である.また,目的の一部であった水質項目の直接同化に向けてもすでに技術開発を進めているところであり,26年度内に一定の成果を得たい.
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書の「研究の目的」欄において,「4次元変分法あるいはアンサンブルカルマンフィルター法」と記載していたが,4次元変分法による同化によって,一定の成果が得られると見込まれ,また,数値解析における個別課題を抽出しやすいという利点も確認できたことから,当面は4次元変分法によるデータ同化に注力したい. また,パラメータの最適化技術についても新たな手法を検討していく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なり,少額の次年度使用額が生じた. 研究計画に変更はなく,前年度の研究費も含め,当初予定通りの計画を進めていく.
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