研究課題/領域番号 |
25709044
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
白崎 伸隆 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60604692)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 水系感染症 / ノロウイルス / ウイルス様粒子 / 新規Immuno-PCR法 / 膜ろ過処理 / フロック化 / ケーキ層形成 / 膜ファウリング |
研究概要 |
本研究では,水系感染症の事例が世界中で増加しているにも関わらず,生体外での効率的な培養法が未確立なことから,浄水処理性に関する知見がほとんど得られていないノロウイルス,サポウイルス,E型肝炎ウイルスについて,野生ウイルスと構造的・抗原的に等しいウイルス外套タンパク粒子(VLPs)を作製し,作製したVLPsの高感度定量法を開発することにより,培養不可能なノロウイルス,サポウイルス,E型肝炎ウイルス粒子の物理的な浄水処理性を,培養法の確立を待つことなく世界に先駆けて詳細に評価することを目的とした.また,ウイルス処理に有効な新規凝集剤を開発し,インライン凝集-MF膜ろ過処理に適用することにより,ウイルス処理の更なる高度化・高効率化を図ることを目的とした. 本年度は,ノロウイルスVLPsを高感度に定量可能な新規Immuno-PCR法を開発し,膜ろ過処理におけるノロウイルス粒子の処理性を詳細に調べた.材質の異なる4種類のMF膜(孔径0.1 μm)を用いた場合,VLPsの除去率は0.5 log以下であったのに対し,再生セルロース製のUF膜を用いた場合においては,分画分子量10及び100 kDaの膜により約2 logの除去率が得られ,また,1 kDaの膜を用いた場合には4 logの除去率が得られた.更に,凝集処理とMF膜ろ過処理を組み合わせた凝集-MF膜ろ過処理においては,孔径0.1 μmのMF膜を用いた場合であっても4 log以上の高い除去率が達成された.加えて,凝集-MF膜ろ過処理におけるVLPsの処理には,フロック化による除去のみならず,ケーキ層の形成や膜細孔の目詰まり(膜ファウリング)による除去が寄与していることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,ノロウイルスVLPsを高感度に定量可能な新規Immuno-PCR法の開発に成功し,VLPsと新規Immuno-PCR法を併用することにより,膜ろ過処理におけるノロウイルス粒子の処理性を詳細に評価することができたことから,研究計画は順調に進展している.中でも,ノロウイルス粒子の除去への凝集-MF膜ろ過処理の有効性を示したことに加え,処理メカニズムを明らかにしたことは特筆すべき成果と考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,当初の計画通り,ウイルス処理に有効な新規凝集剤の開発を中心に実施する.新規凝集剤の有効性評価においては,ノロウイルスVLPsのみならず,代表的な水系感染症ウイルスであるアデノウイルス,A型肝炎ウイルス,ポリオウイルスへの有効性も詳細に評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費及びその他の経費が当初の予定よりも安く抑えられたために未使用額が生じた. 未使用額は次年度の物品費として使用することにより,当初の予定よりも実験回数を増やし,結果の信頼性の向上を図る.
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