研究課題
本研究では,水系感染症の事例が世界中で増加しているにも関わらず,生体外での効率的な培養法が未確立なことから,浄水処理性に関する知見がほとんど得られていないノロウイルス,サポウイルス,E型肝炎ウイルスについて,野生ウイルスと構造的・抗原的に等しいウイルス外套タンパク粒子(VLPs)を作製し,作製したVLPsの高感度定量法を開発することにより,培養不可能なノロウイルス,サポウイルス,E型肝炎ウイルス粒子の物理的な浄水処理性を,培養法の確立を待つことなく世界に先駆けて詳細に評価することを目的とした.また,ウイルス処理に有効な新規凝集剤を開発し,インライン凝集-MF膜ろ過処理に適用することにより,ウイルス処理の更なる高度化・高効率化を図ることを目的とした.本年度は,アルミ二ウム系凝集剤の作製段階において,塩基添加量,加熱温度,加熱時間を変化させることにより,含まれるアルミ二ウム種の組成が大きく異なる複数の凝集剤を作製し,それらのウイルス処理への有効性を調べた.モノマー状Al種,ポリマー状Al種,あるいはコロイド状Al種を多く含む凝集剤のポリオウイルス,コクサッキーウイルスへの有効性を回分式凝集処理実験により調べたところ,コロイド状Al種の存在割合の大きな凝集剤を用いた場合に最も高い除去率が得られた.また,27Al-NMR法による分析の結果,高いウイルス除去率が得られた凝集剤には,13量体や30量体といったアルミ二ウム多量体が含まれていることが明らかとなったことから,これらのアルミ二ウム種を多く含む凝集剤を用いることにより,水系感染症ウイルスを効果的に処理できることが示唆された.
2: おおむね順調に進展している
本年度は,含まれるアルミ二ウム種の組成が大きく異なる複数の凝集剤の作製に成功し,代表的な水系感染症ウイルスであるポリオウイルス及びコクサッキーウイルスの処理への有効性を示すことができたことから,研究計画は順調に進展している.中でも,ウイルス処理に有効なアルミ二ウム種を特定できたことは特筆すべき成果と考えられる.
来年度は,当初の計画通り,凝集沈澱-急速砂ろ過処理及び新規凝集剤を用いたインライン凝集-MF膜ろ過処理におけるウイルスの処理性評価を中心に実施する.なお,ノロウイルスVLPsに加え,アデノウイルス,A型肝炎ウイルス,ポリオウイルス,コクサッキーウイルス,エコーウイルスの処理性についても詳細に評価する.
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件)
Water Science and Technology: Water Supply
巻: 14 ページ: 429-437
doi:10.2166/ws.2013.218