まず,昨年度に実験を行った側柱梁接合部の試験体を対象として,応力・歪性状を把握するためのFEM解析を行った.その結果,整備した載荷装置では,任意の斜め方向入力を与えると,部材の塑性化に伴う十字形構面とト字形構面の剛比変化に起因して,梁に不用意な構面外応力が生じる現象が明らかになった.すなわち,降伏後の大変位振幅載荷時に,想定していなかった構面外応力が試験体に作用し,梁の終局状態が連成座屈に統一されたことで塑性変形能力に大差が生じない実験結果となった可能性が発覚した.これを回避するための改造を載荷装置に施すのは費用面で困難であったことから,その後の実験を0・45 度方向入力の2種類に限定することとした.なお,この変更により45度方向入力の検討対象は必然的に中柱梁接合部となった. その上で,架構形状,パネル梁耐力比,入力方向の影響に関するFEM解析を行った.その結果,パネルが梁よりも先行して塑性化すると梁の全塑性曲げ耐力が低下し,パネル梁耐力比の減少に伴って梁の全塑性曲げ耐力が直線的に低下する重要な傾向が得られた.また,パネルウェブ・フランジそれぞれの塑性化に起因する低下現象を明らかにした上で,梁の耐力低下傾向を表現できる簡便な力学モデルを構築した. これらの検討結果に基づいて,実在骨組として現実的な柱・梁の組合せの範囲で,梁の全塑性曲げ耐力の低下率が最大であった解析モデルを選定して実大載荷実験を行った.その結果,解析どおりの全塑性曲げ耐力の低下はみられた一方で,昨年度と同様,梁端部が早期に終局状態に至るような現象はみられなかった.0・45 度方向入力に限定した結果ではあるが,現実的な範囲で最悪の条件を選定して得られた成果であり,研究全体を通じて,パネルの塑性化を伴う梁端接合部の曲げ耐力や梁の塑性変形能力を評価するための基礎データを得るという最大の目標も達成することができた.
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