ポリオールを用いた液相法で組成を制御してFeNi水酸化物微粒子を合成した後、それに水素ガス雰囲気下で還元熱処理を施すことにより任意の組成のFeNi合金粒子が得られる。本年度は、その反応過程を理解する上で重要となる不活性ガス雰囲気下での熱処理による変態過程を調べた。FeNi水酸化物微粒子の熱重量分析において、室温からの昇温に伴い大きく分けて3段階の重量減少が観測された。そこで、第一重量減少直後の温度で熱処理を施した試料のX線回折測定を行った結果、FeNi水酸化物微粒子の結晶構造はほぼ保持されることが確認された。また、第一重量減少が生じた温度近傍において発生ガスの質量分析により水が検出された。従って、第一重量減少は主に表面に吸着した水の脱着に起因する。一方、第二重量減少直後では結晶構造が異なる酸化物の微細な混合物に変態し、第三重量減少直後ではfcc構造の金属およびスピネル構造の酸化物に変態することが明らかになった。さらに、X線吸収分光測定の結果、第三重量減少直後ではNiはほぼ金属状態であり、Feは金属と酸化物の混合状態であることが示唆された。このことは、第二重量減少直後で生成した酸化物が還元されたことを意味する。第三重量減少が生じた温度近傍において発生ガスの質量分析により二酸化炭素が検出された。合成に用いたエチレングリコールや金属塩に含まれている酢酸イオンなどの有機成分の熱分解により生じた炭素や一酸化炭素により酸化物が還元されたことを強く示唆する結果を得た。
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