研究概要 |
4種類のパルスレーザー励起波長(193, 248, 532, 1064 nm)を採用したパルスレーザー堆積法を用いて、鉄系超伝導体BaFe2A2:Coの高品質薄膜が得られる条件を検討した。 まず、各レーザー波長 - パルスエネルギー - 薄膜成長速度の関係を調査したところ、レーザーの波長が長くなる(= 光子エネルギーが小さくなる)に伴って、同じパルスエネルギーを照射した場合の成長速度が速くなることがわかった。そして、X線回折のout-of-planeおよびin-planeのロッキングカーブ測定から、各レーザー波長における最適なパルスエネルギーを評価したところ、そのパルスエネルギーはレーザー波長が短くなるに伴って大きくなることが明らかとなった。 以上の結果と、各レーザーにおける光学定数を考慮したところ、レーザーの波長が異なった場合であっても、最適な成長速度はすべて同じ0.3nm/secでほぼ一定であることが明らかとなった。すなわち、成長レートが最適であることがもっとも重要であった。それでは、なぜ他の研究グループがこのような結果に至っていないのかを考えてみると、短い波長(たとえば248nm)のパルスレーザーを用いた場合に本研究ほどのパルスエネルギーを入れられるセットアップになっていないことと、薄膜成長時の基板-ターゲット間距離は、本研究は鉄系超伝導体に最適なように30mmにしてあるのに対して、50mm前後としているグループが多いことが原因である可能性があるのではないかと考えられた。 以上で見いだした各波長における最適パルスエネルギーで成長させた鉄系超伝導体BaFe2A2:Co薄膜は、励起波長に依存することなく、どの試料においても自己磁場中で1MA/cm2を越える性能を示し、確かに成長速度の最適化が最も重要なファクターであることを実証した。
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