研究実績の概要 |
昨年度末、4種類のパルスレーザー励起波長(193, 248, 532, 1064 nm)を採用したパルスレーザー堆積法を用いて、鉄系超伝導体BaFe2A2:Coの高品質薄膜が得られる条件を検討した。そして、レーザーの波長が異なった場合であっても、最適な成長速度はすべて同じ0.3nm/secでほぼ一定であることが明らかとなった。すなわち、成長レートが最適であることがもっとも重要であった。以上で見いだした各波長における最適パルスエネルギーで成長させた鉄系超伝導体薄膜は波長に依存することなく、どの試料においても自己磁場中で1MA/cm2を越える臨界電流密度(Jc)を示し、確かに成長速度の最適化が最も重要なファクターであることを実証した。 この得られた知見をもとに今年度では、さらに高い臨界温度が期待できるP添加BaFe2As2に最適プロセスを適用し、さらなる高性能化を目指した。そして、P添加系では、これまでよりも遙かに高い成長温度が必要であることを見いだし、その実現のためのシステムの立ち上げから行った。そして、高い磁場中(9T)では最高の1MA/cm2を越える性能を示す薄膜の作製に成功した。さらに、そのJc特性の磁場中の異方性を調査したところ、膜の成長方向(c軸方向)に沿った効果的な磁束ピン止め中心が自然に成長していることがわかり、応用上重要となる等方的な特性を有することを明らかにした。 さらに、本研究課題の目標値である臨界電流密度10MA/cm2にほぼ匹敵する7MA/cm2にまでの高性能化に成功した。
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